日本を代表する憧れリゾートの一つである星野リゾートは、なぜこれほどまでに多くの人を引きつけるのでしょうか? ホテルジャーナリスト・せきねきょうこさんならではの視点でその魅力に迫ります。第3回は、お茶の魅力を再発見する「星野リゾート 界 遠州」をご紹介します。

新型コロナウイルスの感染拡大を受け、政府の緊急事態宣言発令に伴う外出自粛が呼びかけられている今、もちろん旅行に行きたくても行けない状況です。ですが、「収束したら、どこに行く?」と、次の旅の計画をじっくり練ることは可能です。ワクワクできる楽しい想像をし、少しでも‟おうち時間”の笑顔が増えれば幸いです。

日本茶に始まり日本茶に終わる
静岡茶の伝道師がお茶の魅力を発信

和室にツインベッドを設えた「遠州つむぎの間 和洋室」。遠州綿紬、金色の壁の和紙、黒いフローリングがシックな印象の客室。

世界的に健康志向が浸透する中、ヘルシーな抹茶や緑茶も注目度がますます高くなっています。浜名湖を望む「星野リゾート 界 遠州」では、茶処に佇む旅館として日本茶の魅力を発信すると同時に、浜松の伝統工芸品である「遠州綿紬(えんしゅうめんつむぎ)」を使用して“ご当地部屋”を設えました。

ご当地部屋とは、星野リゾートの温泉旅館ブランド「界」に造られる、その地域の伝統文化を表現した客室です。それぞれの「界」には興味深いご当地部屋が用意されているのです。

「遠州つむぎの間 茶処リビング付き和室」は、お茶の魅力を満喫する特別室。茶道具も揃い、お茶の淹れ方も教えてくれる。
「遠州つむぎの間 茶処リビング付き和室」ではシーンに応じて異なるお茶を提供。到着時のリラックスには“薫りのお茶”、就寝前には安眠を促す“甘みのお茶”、目覚めには鮮やかな緑色の濃い目の“深蒸し茶”など、お茶の効能を再発見。

遠州とは、静岡県西部一帯の地域を指しています。今の都市名でいえば、浜松市を中心に、磐田市、掛川市、菊川市、さらに海辺の御前崎市のあたりまでを含み、大堰川(おおいがわ)以西に広がっています。かつて“遠江(とおとうみ)”と呼ばれていたこの地方は、古くから農業が盛んに行われてきました。

特に掛川や菊川は日本有数の緑茶の産地として知られ、付近を通過する車窓からはなだらかな丘を覆う茶の木の畑が見え、旅情を誘ってくれます。遠州地域で作られるものだけでも緑茶は22種類にもなるという驚きの数。静岡県が全国一の生産高を誇っているのも頷けます。

淹れ方次第で香り立つ美味しいお茶が飲めることを知る。「お茶ってこんなに美味しい!」と改めて、産地や温度や茶葉の量、心づもり迄、微妙に関わる繊細さに驚く。

その遠州の中心に誕生した「界 遠州」では、お茶を飲み、お茶を食べ、お茶に浸かるなど、お茶に親しみ、お茶の魅力を残らず知ることができるよう、“積極的なお茶三昧”が提供されています。 

界ブランドの各施設には、「ご当地楽(ごとうちがく)」と呼ばれる、その地域の魅力や文化に気軽に触れられるおもてなしが用意されています。ここ界 遠州のご当地楽は「美茶楽(びちゃらく)」。静岡産のお茶を通して、美味しい淹れ方やブレンド方法など、お茶の味わい深さを再発見できるアクティビティが多数揃っているのです。

ご当地楽のひとつ、新茶ブレンド体験では、産地の異なる3種の新茶をそれぞれ試飲し、その中から自分好みの茶葉をブレンド。自身で淹れることで微妙な緑茶の旨味を味わえる。「新茶ブレンド体験」の後には、八十八夜に収穫された縁起物の新茶で一年の無病息災を願う。

緑茶は、茶の木から摘まれた茶葉を加熱処理して発酵を妨げたもの。その茶葉にお湯を注ぎ、約1分間待ってから抽出して飲むのが最良の方法だと教えられ、美味しく飲むために待つことの大切さを知りました。さらに今回、新鮮だったのは、暑い夏には「水出しの緑茶も爽やかで美味しい」と教えられたことです。試してみれば、確かに渋みが少なく甘みのある冷茶が味わえました。

思ってもいなかった日本茶とジンとのコラボレーション。特に新茶の初々しい香りが際立つカクテルは美味しい。

スタッフの中には、お茶の魅力を詳しく丁寧に教えてくれる「日本茶インストラクター」がいます。ここ日本茶の故郷で緑茶をより美味しく味わえるよう、濃やかにお湯の温度や茶葉の分量、甘みや渋みなどについてもベストな抽出方法を指導してくれます。アジア各国の茶処では、何度となくその土地特産の緑茶をいただいていますが、日本産の緑茶ほど薫りが高く、繊細な味と美しい色合いの緑茶に出会ったことがありません。