安倍首相のインスタグラムより

星野源「うちで踊ろう」安倍首相 “コラボ事件” に抱いた強烈な違和感

音楽ジャーナリストとして思うこと

はじまりは、1本の短い動画だった。

星野源が自身のインスタグラムに投稿した「うちで踊ろう」。約1分の弾き語り動画は、巨大な反響を呼び、社会現象と言えるほどの大きなムーブメントを巻き起こした。

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

Gén Hoshino 星野源(@iamgenhoshino)がシェアした投稿 -

彼が自身のアカウントにiPhoneで撮影した動画を投稿したのは4月2日の深夜のことだ。そこから10日間で起こったことは、後から振り返って、日本のカルチャーと政治にとっての、一つの分水嶺になったと言えるかもしれない。

4月12日、「事件」が起きた

最初に広がったのは、ピュアな喜びと楽しみの感情だった。しかし4月12日に投稿された1本の動画が、それを塗りつぶすかのような大きな怒りと嫌悪感を巻き起こした。

安倍晋三首相が、この「うちで踊ろう」の動画に合わせ、愛犬を抱いたり、お茶を飲んだり、読書したり、テレビのリモコンを操作したりするなど、自室でくつろぐ様子を撮影した動画を、自身のインスタグラムやツイッターなどに投稿したのである。

この動画は沢山の人に反感を与えた。星野源のファン、音楽やエンタテインメントの関係者、「うちで踊ろう」のムーブメントを楽しんでいた人だけでなく、多くの人に拒絶反応のような感情をもたらした。

筆者個人の第一印象は「とても邪悪なもの、醜悪なものを目の当たりにした」というものだった。まず率直に思ったのは「それは為政者のすることではない」ということだ。

 

新型コロナウィルスの感染拡大は世界中に甚大な被害をもたらしている。危機に対応するため、各国の国家元首や自治体の首長は連日スピーチや会見を行い、国民に呼びかけている。

なかには、担当医が感染したため自宅隔離となったドイツのメルケル首相や、夫人が陽性反応を示し隔離生活に入ったカナダのトルドー首相のような例もある。どちらも自宅から執務を行い、トルドー首相は自宅前でビデオ記者会見を行っている。

どの国の為政者も、感染拡大を防ぐため、国民に不要な外出を控え、自宅で過ごすようメッセージを送っている。ただし、その言葉と共に語られるのは、経済支援や補償の政策だ。

休業を余儀なくされ生計が成り立たなくなる人も増えている。医療従事者などこうした状況でも外で働かざるを得ない人も多い。

そんななか、政治家のやるべき仕事は、ひとりでも多くの人を救い、支援するための具体的な策を、判断の根拠を明確にしながら提示することだろう。伝えるべきは瀟洒な自宅で犬を抱いてくつろいでいる姿ではない。