ドイツの市民が「コロナ対策」に、こんなに満足しているワケ

充実した経済支援と首相のメッセージ
河内 秀子 プロフィール

ちなみに、日本ではアーティストへの支援が注目を浴びたが、これはドイツにおいて文化が生活の中に根付いているというだけでなく、「文化芸術」が重要な「産業」の1つであることにも由来している。博物館・美術館の数は全国で約6800。世界中で開催されているオペラ公演の約3分の1がドイツの舞台で演じられ、全国80以上のオペラ座がある

ベルリン国立歌劇場〔PHOTO〕Gettyimages

特に首都であり、人口約380万人を抱えるベルリンには、劇場、博物館・美術館、図書館やギャラリーなど、市内に810以上もの文化施設が存在する。それに加え、クラブなどは数ははっきりしないものの、ベルリンのクラブ委員会によると2019年は14.8億ユーロ(約1754億円)もの収益をあげており、9000人以上もの人が働いているという。

大企業は少ないかわりにフリーランス人口の割合も、ドイツ平均の9.9%より高く、11.9%となっている。

3月18日、個人フリーランスなどを対象に、即時支援金が決定。当初、申請の数は2万人と想定されていた。金額以外はその詳細がわからないままに、3月27日12時よりオンラインの申請がスタート。その瞬間にサーバーが落ち、再開まで1時間がかかった。申請の処理速度は遅く、初日の申請処理は約1万人弱。

「この調子では、お金をもらうのは1ヶ月後か」「サイトの説明が不十分」などの不満も見受けられたが、翌日からは担当スタッフを増員、処理速度をアップし、サイトも更新した。そして申請受理からわずか2〜3日で、指定の銀行口座に5000ユーロのお金が振り込まれたのである。

月末ということもあって、とにかく早さを重視したとレーデラー氏はいう。詳細な審査は後回しにして、現時点では無作為審査のみだという。

 

「ここで暮らす人」たちの目線で信頼を勝ち得る

州の規模も異なるので簡単に数字を比較するのは難しいが、ドイツでも3本の指に入る大きな負債を抱えるベルリンという州、街が、なぜ、どうして、このような早い決断をすることが可能だったのだろうか。

「可能だった」のではない。「可能にした、そうしなければいけなかったのだ」とレーデラー氏は言う。

「もちろん、最終的にどこかにツケが回ってくることはわかっています。でも、今まさにその存在自体が脅かされているような人たちがいるならば、まず、何よりも早くそうした人々を助けなければいけないでしょう

また事実として、ベルリンはドイツの中でも最もフリーランス、個人フリーランスの密度が高い街です。その多くが、アーティストですが、それだけでなく美容師やタクシー運転手、配管工でも同様です。資金繰りに大きな余裕がなく、即時支援金が必要となる職業グループも多い。ですから、ベルリン州政府は、非常に早く、この援助プログラムに合意しました」