ドイツの市民が「コロナ対策」に、こんなに満足しているワケ

充実した経済支援と首相のメッセージ
河内 秀子 プロフィール

●申請から振り込みまで平均2日というその対応の早さ、●金額、●納税者番号を持っていてフリーランスで、コロナ危機によって困窮状態に陥った状況であれば誰でもという「無差別性」が注目を浴びたのだろう。

この即時支援(Soforthilfe)には、数多くの受給者からの感謝の声が集まり、またベルリン芸術家職業組合などからも、「ベルリンの政治家が、まちの芸術家たちの窮状を理解しているということを証明した」と高く評価されている。

筆者自身、実際に受給したこの補助金の内容や背景から、その満足度の理由を考察してみたい。

まず、筆者が住むベルリンは、ドイツの首都でありながら、「ドイツではない」と言われることが多い街だということを理解しておいてほしい。

連邦制をとっているドイツでは、16ある州の権限が大きく、教育制度や文化政策などについては州にも立法権がある。地方色も豊かだが、それ以上に、「ベルリンは、典型的なドイツと違う」点が多く、またそれを誇りにしている節がある。

東西ドイツの再統一から今年で30年。まだ首都になって(返り咲いて)から日が浅い。第二次世界大戦の前から自由と芸術の街であり、東西が分断されていた時代も、反体制的でパンクな気風があった。現在もそうした雰囲気が残っている。

現在は、政府・行政の機能はおかれているものの、ベルリンの連邦議事堂で話し合われていることが、実際に強い影響力を持ってその外で反映されているかは……微妙なところだ。市内に大企業は少なく、経済的な中心は他州、特に南側にある。

ドイツは現在、アンゲラ・メルケル首相が属するキリスト教民主同盟(CDU)と、ドイツ社会民主党(SPD)の連立政権だが、ベルリンの州政府は2016年から、ドイツ社民党(SPD)と左翼党(LINKE)、同盟90/緑の党(Bündnis 90/DIE GRÜNEN)が率いている。

4月10日、イースターの祝日にベルリンの連邦議事堂前でピクニックをする人々(著者撮影)
 

こうした特徴を頭に入れた上で、連邦政府とベルリンの経済政策を見てみよう。

ドイツ全体での経済対策の規模は、前述の通り7500億ユーロ(約90兆円)だ。事業者、企業向けには、融資や救済基金などが準備されており、また「操業短縮手当」(休業を余儀なくされた労働者の給与を国が助成する)の支給要件が緩和された。

家賃や、様々な条件はあるものの電気・ガス・水道、電話やネット、所得税の前払いなどの月々の支払いも7月まで一時的に停止することもできる。