ドイツの市民が「コロナ対策」に、こんなに満足しているワケ

充実した経済支援と首相のメッセージ
河内 秀子 プロフィール

市民と同じ目線で語りかけるメルケル

まずドイツの政府やメディアが取り組んだのが、場所や年代などによって違いが大きい危機感を、国民で共有することだ。

メディアは、正確なデータや詳細な情報の、視覚的にわかりやすく、かつ素早い発信に努めている。これはフェイクニュースを封じるためにも重要な取り組みだ。
ベルリンの新聞Berliner Morgenpost紙などのメディアは、インタラクティブなインフォグラフィックを次々と出しており、集中治療ベッド数の空き状況がわかる図なども公開している。

また北ドイツ放送は、2月26日から、欧州最大級の大学病院、シャリテのウイルス学研究所所長、クリスティアン・ドロステン氏によるPodcast「コロナ・アップデート」をスタート。

ウイルスの専門家であり、政府のアドバイザ−でもある人物(日本で言う「専門家会議」のメンバーに当たるだろうか?)が、現状を伝え、現時点でわかっているデータを元に、何を注意すべきかを語る。「前のデータを元に以前私はこう発言したが、間違った見解だった」と、アップデートすることも忘れない。視聴者からの質問にも答えてくれる。3月からドイツ中で最も人気のPodcastだ。

 

アンゲラ・メルケル首相は、そういった数字や情報を伝えるだけでなく、人々の「気持ち」に訴えかけた。3月18日、メルケル首相が行ったテレビ演説だ。

そもそも、首相は15年間に及ぶ任期の中で、新年以外に国民に向けてのスピーチを行ったことはない。テレビ演説が行われるというだけで、今回の事態の緊迫度が国民に伝わる。

「戦争」「みえない敵」などの言葉で煽ることもなく、「Mutti(おかん)」の愛称を持つ彼女らしさを強調し、大きな信頼感を得た。

「たくさんの人が仕事に行けず、子どもたちは学校に行けず、劇場や映画、お店も閉まっています。何よりも辛いのは、これまで当たり前だった、人との出会いがないことかもしれませんね。そんな中で誰もが、今後どうなるんだろうと、たくさんの疑問や悩みを抱えていると思います」と、まず問題を共有した。