日本人は知らない、本物のリーダーが抱くこの国への「危機感の正体」

伊藤忠元会長・丹羽宇一郎氏が語る

日本企業に抱く危機感

―著書『社長って何だ!』は、あらゆる組織のリーダーに必要な「資質と能力」について書かれています。

「企業の経営者は大きな夢や目標に挑む意欲や気力を失って小さな安逸に埋没している」。丹羽さんが約20年前に抱いたこの危機感は、「いまも変わらないどころか、ますます強くなっている」と語っています。

まさにこの危機感に駆られて書いたのが本書です。

いま、日本の上場企業は自社株買いを加速させ、株主重視の姿勢に囚われています。これがすべて間違いだとは言いませんが、株主重視だけでは世界の潮流から取り残されかねません。

昨年の8月、アメリカの大手企業経営者でつくる「ビジネス・ラウンドテーブル」は、従来の「株主第一主義」を見直し、従業員や顧客、地域社会の利益を重視するとの声明を発表しました。

背景には貧富の差や環境破壊などを防ぎ、持続可能社会を求める気運がある。このように世界が変わろうとしているときに、日本の経営者は周回遅れの株主最重視をとっている。変わるべき時に何も変わっていないのです。

 

―本書では特に従業員を尊重する大切さが説かれています。そのために必要な社長の資質とは何でしょうか。

まず踏まえなければならないのは、人間こそが会社の資産であるということ。これは古くから日本企業の経営には、当たり前の価値観でしたが、株主第一主義が浸透する過程で、人間尊重は置き去りにされてしまったのです。