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ベストセラー作家を絶望的な気分にさせた「ある一冊の本」

『京都ぎらい』の著者の人生の10冊

歴史にハマったきっかけ

ここにあげたのは、私の道標になってくれた10冊です。

三銃士』は小学生のときに絵本で面白さにはまり、中学生になって岩波の文庫の上下巻を読破しました。

田舎から出てきた騎士ダルタニャンと近衛銃士のアトス、アラミス、ポルトスとの友情物語であるこの小説は、17世紀初頭、ルイ13世治下のフランスの史実がベースになっています。ルイ13世とリシュリュー枢機卿との対立、前時代から続く旧教徒と新教徒との争いなどの史実が実に面白く書かれている。

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その後、『黒いチューリップ』や『王妃マルゴ』など、デュマの作品を次々読みましたが、どれも面白かった。私はデュマのおかげで歴史という娯楽を知りました。

ちなみに『三銃士』の登場人物の中で私がいちばん好きなのは、ミレディです。完璧なスパイとしてフランスにもぐり込んでいた彼女も最後は窮地に追い込まれ、「もうだめだわ」と英語で呟き、教会の屋上から身を投げる。男心にぐっときました。私が春に目覚めたころだったせいかな。

科挙』を読んだのは大学に入ってすぐの時でした。科挙は6世紀頃から20世紀初頭まで、中国で行われた官吏登用試験です。

 

家柄や身分に関係なく、この試験に通れば、官吏になって出世ができる。当然多くの人が殺到し、試験は厳しいものとなりました。宋代以降、科挙は「郷試」「会試」「殿試」の三段階になり、殿試に通ると「進士」という称号を受けて高級官吏に任用されます。

完備しきったこの試験制度がいかなるものであったのかを読み、自分が経験した日本の受験地獄などたいしたことがないと思いましたね。

科挙の実態をありのままに叙述していくことで、凄惨な試験地獄を生み出す社会の本質にせまっていく。この本は私に、歴史が奥の深い学問であることを教えてくれました。