新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、私の住むオーストリアでは、生活必需品の買い出しなどを除く不要な外出を禁止する、いわゆるロックダウンの状態に入り4週間が経過した。

この4週間の間、クルツ首相は何度も会見を開き、入国制限の段階的な強化や各方面への補償など、次々と新しい対策を打ち出してきた。その結果、一時は1日1000人を超えるペースで増えていた感染確定者が、今では1日200人を下回るようになってきている。

そして4月に入り、オーストリア政府は国の風景を一変させるさらなる対策を打ち出した。「マスクの義務化」である。この対策によりオーストリアに起きた変化、またそこから感じる日本との「スピード感」の違いを考察したい。

マスクをヘイトしていた欧州

まず前提として、新型コロナの感染が拡大する以前の欧米諸国には、マスクの着用に対して非常に後向きな空気があった。マスクの着用をアジア圏の文化の象徴のように捉え、マスク姿のアジア人が差別やヘイトの対象になることも少なくなかった。

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感染が欧米各地に広がり始めた1月や2月の段階でもこの傾向は変わらず、マスク姿のアジア人の映像が感染拡大を報じるニュースに使われたり、ニューヨークではマスク姿のアジア系の女性が暴行を受けるというヘイトクライムまで起きる事態になっていた。

ところが、2月後半にイタリアで始まった感染爆発を皮切りに、世界各地で急速に感染が拡大。WHOがパンデミックを認める段階に入ると、マスクに対する欧米諸国の反応が変わり始めた。