コロナ危機で再確認した「人は意外と変わらない」という現実

「久松るす」に「コレラ一揆」…
田中 ひかる プロフィール

東京のある村では、若者たちが「コレラの祈祷」と称して寺の経櫃(経典を納めておく櫃)を担ぎ出し、「コレラを送れ、隣村へオークレ」と囃しながら村内を練り歩き、それに対抗して神社の獅子頭を担ぎ出した隣村の若者たちと大乱闘になるという事件も起きた。

罹患すれば極めて致死率の高かったコレラに対する人々の恐怖心がデマを広げ、一揆や殺人事件、大乱闘を引き起こしたのである。

滑稽に感じられるかもしれないが、現在のコロナ禍において、「トイレットペーパーが買えなくなる」というデマに踊らされ、品薄状態を引き起こした私たちは、彼らを笑えない。

また、インフルエンザを「お染」「お七」など女性にたとえ、彼女たちの思い人は「留守」「いません」と貼り紙をすることで、感染を避けようとした人たちのことも、もちろん笑えない。

貼り紙をすることで、感染の恐れのある来客をやんわりと拒むことができていたとしたら、それは布マスクの配布より、はるかに効果があったかもしれない。

 
【参考文献】
・「【怪と幽 号外】災厄を予言!? 疫病を退散!? 話題の「アマビエ」とは?その正体を妖怪博士が解説する」『カドブン』
・逢見憲一「インフルエンザ流行の歴史と公衆衛生の役割 ―“スペインかぜ”と現代―」『医学史と社会の対話』
・立川昭二『病気の社会史―文明に探る病因』NHKブックス
・成沢光『現代日本の社会秩序―歴史的起源を求めて』岩波書店