ことばで感情をコントロールできる

ネコ口調は相手に対して距離を縮めたり、言いたいことを柔らかく伝えるのに効果的だということはおわかりになったと思います。いまは、新型コロナウイルス対策で在宅時間が長くなったりと生活の不便が続いて、ちょっとしたことでもイライラしがち。では、そういった自分自身の感情をコントロールしたりする時にはどんなことばが有効なのでしょうか。

ミシガン州立大学のモーサーらが、こんな面白い実験を行いました。被験者に嫌悪感を抱かせるような画像を見せた後、一方のグループには、「いま“私”はどう感じているか?」と心の中で一人称で自問自答してもらい、もう一方のグループには、「いま“彼・彼女”はどう感じているか?」と心の中で他人事のように三人称で語ってもらいました。その際の脳の活動を脳波やfMRI(磁気共鳴機能画像法)で測ってみると一人称で語った場合と比べて、三人称で語った場合、感情に関わる脳の部位(扁桃体)の活動が急激に低下することがわかったのです。

つまり、不快な感情を抱いたら、自分自身を客観視し、三人称であたかも他人の出来事のように自分のことを語ってみるだけで、負の感情を抑えることができるのです。論理的・客観的にものを考える脳が働き出すことによって、感情などを司る脳の部位の活動が抑え込まれる。冷静さ、客観視というのは、自分の感情と戦うためにも有効というわけです。

イラッとする出来事のほとんどは来年にはもう覚えていないようなことばかりです。一時的な気持ちの高ぶりに身を任せて感情的な発言をすれば、自分も相手も、そして周りの人も気分が悪くなるだけ。それよりは、三人称で自問自答をして、気持ちを落ち着けてやり過ごしてしまうほうが賢明と言えるのではないでしょうか。そうして気分をコントロールして、心おだやかに毎日を過ごしていきましょう。

<参考文献>
秋月高太郎(2012)「動物キャラクタの言語学」『尚絅学院大学紀要』 64 号 43-57頁.
秋山広美, 小松孝徳, 清河幸子 (2011).オノマトペから感じる印象の. 客観的数値化方法の 提案. 情報処理, vol. 142, 1-7頁.
山口仲美 (2002).『犬は「びよ」と鳴いていた 日本語は擬音語・擬態語が面白い』光文社.
Moser, J. S., Hartwig, R., Moran, T. P., Jendrusina, A. A., and Kross, E. (2014). Neural markers of positive reappraisal and their associations with trait reappraisal and worry. Journal of Abnormal Psychology, 123(1), 91-105.