果てしなく広がる海。本の世界もまたしかりで、自然や生物、文化、歴史、哲学、冒険、あらゆる事象につながっていく。深い深い「本の海」へ、潜ってみましょう。

鳥飼 茜
「海に圧倒される作品三選」

『宝島』
真藤順丈/著

戦後すぐの沖縄の少年少女が、どう共闘して生き延びたか。沖縄の人の方言「なんくるないさ」がこれを読む前とはがぜん厚みと凄味を増して感じられるように。日本人すべてにとってこの海がただきれいなだけの存在ではないことを、息もつかせぬ怒濤の展開と臨場感で教えてくれます。(講談社)


『真鶴』
川上弘美/著

タイトルがまずかっこいい。東京から何の気なしに真鶴にやってきた主人公。真鶴の地で失踪した夫の謎解きを誘うように現れた女の幽霊に手を引かれ、彼女は真鶴の海沿いを歩く。現実と幻影、記憶の情景が細密な描写で混じり合っていく様子が、ホラーで幻想的で美しい。(文藝春秋)


『クリームソーダシティ 完全版』
長尾謙一郎/著

渋谷でDo the right thing(正義のための善意活動)に邁進する2人の若者が、ある行動を境に別世界の楽園クリームソーダシティに召喚される。その楽園ではすべてが思いのままに、現実世界を突破する力を得られる。それは果たしてこの場がなせる力なのか、または人間の中にある創造という純粋欲求が世界を凌駕した時に誰もが持ちうる力なのか。

特級のギャグ漫画なので爆笑必至ですが、笑っている自分を誰かの大きな目で俯瞰されているような感覚に陥ります。(太田出版)

【PROFILE】
鳥飼 茜・漫画家

とりかい・あかね/1981年大阪府生まれ。2004年デビュー。『週刊スピリッツ』にて『サターンリターン』を連載中。自身の恋愛と生き方について綴ったエッセイ『漫画みたいな恋ください』(筑摩書房)が話題に。

【my beloved ocean】
瀬戸内海

【my ocean memory】
去年、仕事で長崎県の壱岐に行ったのですが、運悪く記録的な大雨に見舞われてしまい、エメラルドグリーンで有名な美しい海だったはずなのに、悪天候の中案内してくれた現地の船頭のおじいさんが「今までここで生きてきて見た、いちばん最悪の海」と断じたこと。だいたい私が珍しくでかけるとこんな様子です。

高野秀行
「海の未知に挑戦する科学者たち」

『微生物ハンター、深海を行く』
高井研/著

有人潜水艇で水深2000m以上の深海に潜って極限状況にすむ未知の生物を調査し、そこから生命がどのように誕生したのか推測するという壮大な活動を行う著者。ノーベル賞に最も近い日本人生物学者かもしれないが、「ボクチン潜りたいニャー♡」なんて、文章はむちゃくちゃポップ。でも海とは、研究とは何か、熱く生きるとは何かを教えてくれる。(イースト・プレス)


『進化の法則は北極のサメが知っていた』
渡辺佑基/著

著者は水生動物に記録計やビデオカメラを取り付けるという画期的手法で彼らの生命活動を調べている。北極の水温零度の深海にすむニシオンデンザメ、異常に大食いの南極のペンギン……。極限の現場で奮闘するさまは冒険探検の世界。(河出書房新社)


『大洋に一粒の卵を求めて 東大研究船、ウナギ一億年の謎に挑む』
塚本勝巳/著

海洋生物学界屈指の謎の生物であるウナギ。東大海洋研究所のチームは30年以上かけて自らの船でウナギの稚魚を捕まえるという原始的探検を行っている。とうとうチームは太平洋の西マリアナ海嶺にたどり着く。たかがウナギにどうしてここまで情熱をかけられるのかという当初の疑問は、読み進めるうちに、ウナギとその研究者に対する畏敬の念に変わっていく。海は巨大だから、科学者のロマンも巨大なのである。(新潮社)

【PROFILE】
高野秀行・ノンフィクション作家

たかの・ひでゆき/1966年東京都生まれ。早稲田大学探検部での活動を記した『幻獣ムベンベを追え』(集英社)で作家デビュー。2020年に『謎の未確認納豆を追え!』『イラク水滸伝』を刊行予定。

【my beloved ocean】
いわき市の岩間海岸、タイのチャーン島

【my ocean memory】
世界で最も危険な都市と呼ばれるソマリアの首都・モガディシュで、リドというビーチを訪れた。兵士が厳重に警備する中、市民が海辺で遊び、レストランで食事を楽しんでいた。イスラム過激派によるテロが何度も起きた非常に危険な地域なのだが、「海を楽しみたい」という人々の気持ちを止めることはできないのだなと思った。