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團十郎襲名を迎え撃て!ライバルたちはこんな大役に挑むはずだった…

幻となった3・4月の歌舞伎公演

新型コロナウイルスの影響で、2月下旬から多くの演劇・コンサートが中止になった。

歌舞伎も3月・4月の公演が全て中止になり、さらに5月から7月までの市川海老蔵の13代目市川團十郎襲名披露公演も、延期が決まった。

海老蔵の團十郎襲名が「2020年5月」と正式に発表されたのは昨年1月14日だった。5月に襲名し、7月に團十郎としてオリンピックを迎え、世界にアピールするはずだった。江戸歌舞伎は代々の「市川團十郎」を中心に発展していったので、團十郎の代替わりは改元に等しい。

海老蔵と同世代の他の役者たちも、新時代到来の日程が確定したことで、團十郎襲名披露公演に向けて、それぞれの目標を立てたはずだ。とくに、直前となる3月・4月、新・團十郎のライバルとなる役者たちは大役に挑んだ。しかし、その全てが、「幻の公演」となってしまった。

見た演劇は覚えているが、見なかった演劇は、「見ようと思った」ことも忘れてしまう。

そこで、3月・4月の「幻の舞台」を、それがどういう舞台になるはずだったのかだけでも、記してみる。

以下、その「上演されなかった舞台」について、いちいち「~の予定だった」とするのはわずらわしいので、上演されたということにして、「過去形」で記していく。

 

菊之助、準備万端

新しい團十郎のライバルは、将来、尾上菊五郎になるはずの尾上菊之助だ。

少年時代の海老蔵・菊之助は共演することが多く、花形の名コンビだったが、海老蔵が独り立ちし、歌舞伎座の大一座に出なくなると、菊之助との共演も團菊祭くらいになってしまった。

襲名披露公演で菊之助は、5月に『助六』の揚巻、7月に『京鹿子娘二人道成寺』の白拍子花子が決まっていた。どちらも女形の大役であり、大舞台での「團十郎の相手役」としての確固たるポジションを確立した。

だが、菊之助としては「團十郎の相手役」で終わってはいけない。

團十郎の襲名披露公演の間は團十郎を立てるが、それが終われば、「團十郎の好敵手たる菊之助」でなければならない。そのためには海老蔵が襲名の準備で舞台に立たない3月・4月に、圧倒的な存在感を示す必要があった。