「密」を避けると孤独になるジレンマ

思い返せば、ダイヤモンドプリンセス号の船内で集団感染が起き、日本国内でも感染拡大の兆しが見え始めた時から、私たちの精神衛生状態は悪化し、心理的ケアのニーズが増えるだろうことは容易に想像ができた。行動を制限され自由に外に出られないことによる抑うつ、感染への不安や恐怖、ぶつけようのない怒り……。しかも、新型ウィルスというだれもが経験したことのない正体のつかめないものを前にした不安は、あまりにもつかみどころがなく漠然としていて、気持ちが落ち着かずに、長引けば長引くほど、メンタル不調を加速させていく。

専門家たちが再三繰り返しているように、感染拡大防止のためには、密集、密閉、密接の「3密」を避け、不要不急の外出を控える必要がある。だが、これは裏を返せば、メンタル不調を抱えているにもかかわらず、人や社会とつながることを一時的にでも断念させられ、個人や家族で抱え込まざるを得ない状況が生み出されているということにほかならない。その現実に胸が苦しくなる。

実際、ここ最近になって、DVや虐待の相談が増えているという話を耳にするようになった。もしかしたら、家族内で暴力にさらされたまま、相談すらできないといった状況に陥っている被害者も少なくないのだろうと思う。家庭内暴力の問題に限らず、依存症やひきこもり、病気、障がい、生活困窮、子育てならぬ「孤育て」家庭など、社会や人とつながることが生活の大きな基盤になっている場合、つながることを手控えなくてはならない現状は過酷だ。

家の中で不安を抱える子どもや人と社会を断絶しなくてはならない状況を避けなければならない Photo by iStock