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新型コロナ、韓国映画『パラサイト』が描いていた「感染症と排除」の関係

韓国映画の想像力

*本稿は、映画『パラサイト 半地下の家族』『グエムル 漢江の怪物』のネタバレを含みます。

新型コロナ・ショックと映画の想像力

ポン・ジュノ監督作品『パラサイト 半地下の家族』が米アカデミー賞で「作品賞」「監督賞」「脚本賞」「国際長編映画賞」の4冠に輝き、アジア映画初の快挙として話題をさらったのは今年2月9日のことだ。

ポン・ジュノ監督〔PHOTO〕Gettyimages

本作は格差社会をテーマにしたといわれている。全員失業中のキム一家がくらす陽の射さない「半地下住宅」と、一家がその素性と学歴・職歴を偽装してそれぞれ使用人となり、じわじわとパラサイトしていくIT企業経営者のパク一家がくらす「高台の大豪邸」との対称性は、居住地の高低によって両者の格差を浮かび上がらせる。

だが、むしろ本作が巧妙なのは、格差問題を“持てるもの=悪/持たざるもの=善”の対立というわかりやすい二項図式で描かなかった点にある。パク氏の態度はリベラルで紳士的だし、「ヤング&シンプル」と評される夫人もお人好しで邪気のない人物だ。

一方、両家のあいだの分かちがたい格差を暗示し、なおかつ越境侵犯するディテールとして用いられるのが、身に沁み込んだ「匂い」である。ソン・ガンホ演じるキム・ギテクが、最後にパク氏に対して抱いた殺意も、きっかけはそうした「匂い」に対するパク氏の反射的反応であった。これはカビ臭い半地下でのくらしにも一因があるだろう独特の生活臭で、実際、地下鉄などの密閉空間では人々の雑多な体臭が入り混じり、いわく言いがたい「匂い」が醸されている。

 

ところで、「パラサイト」のアカデミー賞4冠が報じられたのは、中国武漢に発現した新型コロナウイルスがじわじわと周辺諸国へ、そして世界へと広がりつつあるタイミングだった。日本では、ダイヤモンド・プリンセス号が2月3日に横浜港沖に到着し、乗客たちの下船が始まる19日まで洋上に浮かんでいた。1月29日に武漢よりチャーター機第一便で帰国した男性から陽性反応が出たのは、アカデミー賞から一夜明けた2月10日のことだ。