4月7日夜、安倍首相が会見を開き、7都府県に非常事態宣言が発令されたが、どこ吹く風という人もいるようで…。

コロナ禍の中で痛感した「非常時の老親ほどやっかいなものはない」

千葉県在住作家の私的体験報告
新型コロナウィルスの感染拡大は、第二次大戦以来の世界的危機といっていい。4月7日、日本政府は7都府県に対して「緊急事態宣言」を発令した。この7都府県には千葉県も含まれているが、県下館山市に暮らす作家は、家族のある行動に大いに悩まされているという……。
 

あまりにわがままな老母とのバトルの日々

2019年9月、台風15号通過後の大停電に見舞われた千葉県の片隅、館山市で、90歳の父と88歳の母と暮らす私が、わがままで気が短い老父との悶絶の日々を書き綴ってから、はや半年。今度は、世界中がコロナウィルスの脅威にさらされているにもかかわらず、呆れるほど自分勝手な行動を繰り返す老母にうんざりする日々を送っている。

腰が曲がり、足下はおぼつかなくなり、耳はかなり遠くなっている88歳。電話が鳴っていても気がつかず、口を開けば腰が痛いだの、膝が痛いだの、お腹が痛いだのとのたまっている身でありながら、自分の衰えを認めたくないのだろうか……。

「ちょっと食べ過ぎなんじゃない。年齢とともに胃腸の働きも弱まってきてるんだから、食べる量を控えるようにって先生にも言われたよね」

娘である私がやんわりと注意しようものなら、

「おまえはいちいちうるさいんだよ」

と、鬼の形相で食ってかかってくる。今の言葉で言う逆ギレである。

聞く耳を持たない老母とのバトルの日々

元々かなり我が強く、常にお山の大将でいたい性格の人であることは重々承知している。いまさら性格は変わらないだろうと、諦め半分で接してはいるのだが、年齢とともにその傾向は強くなり、今回のような非常時にはそれが顕著に現れるのだからたまったものではない。

コロナウィルスの感染が国内で認められてからというもの、感染予防のため「密集」「密閉」「密接」の3つの「密」を避ける行動が求められているのは、今や誰もが承知していることだろう。そして、良識のある大人なら、自ら進んでそうするのが当たり前だと思うだろう。だが……、そうは問屋が卸さないのがウチの老母である。

感染が日本中に広がり、不要不急の外出を控えるようにと呼びかけられているというのに、相も変わらずいそいそとカラオケに出かけていこうとする。

目に見えないウィルスの恐怖より、カラオケの楽しさが勝る人もいるらしい

自ら行動を改めないのだから、同居人としては見て見ぬふりをするわけにはいかない。

「テレビでも繰り返し言ってるよね。カラオケは、音が漏れないように密閉された場所に大勢が集まって大声で歌うんだから、もっとも危険なんだって。飛沫感染が原因だと言われてるんだから、コロナの感染が終息するまでカラオケは控えた方がいいんじゃないの」

何度注意したことだろう。

しかし、老母ときたら、馬耳東風と受け流すどころか、「私のやることにいちいち文句言うんじゃないよ」と、青筋を立てて反撃してくる。

「文句とかそういうことじゃなくて、コロナウィルスの感染から身を守るためにも、感染を広げないためにも、社会の一員として守るべきことだって言ってるの」

できるだけ冷静に、できるだけ論理的に対応する。

ところが、母は、「そんなこと、お前に言われなくてもわかってるよ」と、吐き捨てるようにのたまうのだ。