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# 新型コロナウイルス

「アジア人差別」「医療崩壊」は本当か?イタリア在住者のリアル

報道だけではわからない、その日常
いまだ収束が見えない新型コロナウイルスの感染拡大。「見えない敵」を前にして、メディアの報道も過激になりつつある。アジア人差別、医療崩壊…こうしたセンセーショナルな見出しが踊るニュースは、一体どこまで現地の実情を伝えているのだろうか。
ロックダウンから1ヶ月がすぎたイタリア、ミラノ在住の記者、鈴木圭氏がその日常をリポートする。

「アジア人差別の写真や動画はお持ちでしょうか?」

「イタリアの状況を取材させてください。どのようなアジア人差別が起こっていますか? 写真や動画など撮影したものはお持ちでしょうか?」

そんなメールが届いたのは、世界中で新型コロナウイルスへの警戒が高まっていたある日のこと。イタリアの現状を取材したいという申し込みで、差出人はとある報道番組のディレクターを名乗る人物だった。

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ちょうどイタリアでも初めてのコロナウイルス感染者が確認された時期で、国内のニュースはその話題で持ちきりだった。それと同時に、一部では分別がない人によるアジア人差別も起こっており、その様子をとらえた画像や動画が、怒りのコメントともにSNSで拡散されていた。中には至近距離で暴言を吐かれたり、日本食レストランの窓ガラスにスプレーで「coronavirus」と書かれたりと、思わず眉をしかめるようなものも多かった。

これらの画像や動画は、日本のニュースでも盛んに報道され、「ヨーロッパではアジア人差別が起こっている」というセンセーショナルな見出しとともに拡散していった。冒頭のメールの主も、こうしたスクープのネタを探していたことは想像に難くない。

 

その一方で、私自身はこうした差別を受けたこともなければ、差別が起こっている場面を見かけたこともなかった。

画像や動画が存在している以上、アジア人差別があったことは事実だと思う。ただイタリア在住のほとんどのアジア人にとって、差別は「そういうこともあるから注意しておこう」といった程度のもので、実際に何が起こっているのかは、ニュースやSNSを通して知るものだったと思う。差別はイタリア中に蔓延していたわけではなく、あくまで一部で起こっているだけのものだった。

ヨーロッパ在住の全てのアジア人が差別されているかのような報道を見るたび「確かに起こっているらしいけど……」と、大きな違和感があったのが正直なところだ。