「怪物」かも…新型コロナと新型インフル「不気味な共通点」があった

なぜパンデミックは起きるのか
ブルーバックス編集部 プロフィール

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、SARSを引き起こしたSARS-CoVと遺伝子配列がよく似ているために、SARS-CoV-2と名付けられた。

米スクリプス研究所らの研究チームは、遺伝子配列の相同性からコウモリが感染源である可能性が高いとみているが、コウモリからヒトへの感染は確認されておらず、ヒトとコウモリとの間にハクビシンなどの中間宿主が関与している可能性も指摘されている。

2009年3月にメキシコで発生した豚由来の新型インフルエンザウイルス(A型、H1N1亜型)は、鳥・ヒト・豚由来のインフルエンザウイルスの遺伝子再集合により誕生した雑種ウイルスである。

2019年4月、メキシコシティにて撮影 Photo by Getty Images

この新型ウイルスは、発生当初、豚インフルエンザと呼ばれた。確かに、ヒトに感染する前は、豚で流行していたウイルスであるため、豚インフルエンザウイルスといっても間違いではないが、遺伝的バックグラウンドは非常に複雑であり、その起源をたどれば、鳥インフルエンザウイルスでもあり、ヒトインフルエンザウイルスともいえる。

新型インフルエンザウイルスは、豚・鳥・ヒトと異なる宿主に感染していた“キメラウイルス”である。

「怪物」である可能性が高い理由

パンデミックを起こした新型インフルエンザウイルスは、そのRNA分節の遺伝子解析から、次のような経緯で誕生したものと推測されている(図5)。

1918年に全世界で猛威を振るったスペイン風邪に起源を持つ古典的な豚インフルエンザウイルス(A型、H1N1亜型)は、世界各地の豚で長い間流行してきた。1997年から1998年にかけて、この古株のウイルスに加えて、香港風邪に起源を持つヒトインフルエンザウイルス(A型、H3N2亜型)、北米の野鳥の間で流行していた鳥インフルエンザウイルス(A型、HAとNAの亜型は不明)が豚の体内で遺伝子再集合を起こし、「トリプルリアソータント」(Triple Reassortant)と呼ばれる3種類のウイルス間の雑種ウイルスが誕生した。

一方、ヨーロッパでは、1979年に豚に鳥インフルエンザウイルスが感染し、これが長い間、ヨーロッパの豚で流行してきた。2009年にパンデミックを引き起こした新型インフルエンザウイルスは、海を越えて、北米で流行していた「トリプルリアソータント」とヨーロッパで流行していた豚インフルエンザウイルスが、遺伝子再集合した結果、ヒトに感染する能力を持ったものと思われる。

今後の解析が進めば、新型インフルエンザウイルスと同様に、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を引き起こしたSARS-CoV-2がどのように過程を経て誕生したのか、わかるはずだ。

以上説明したとおり、新型コロナウイルスと新型インフルエンザウイルスには奇妙なほど整合する部分が多い。SARS-CoV-2は、複数の生物種に感染するウイルスが遺伝子再集合した結果、生まれた怪物ウイルスである可能性が高い。

この怪物に打ち勝つには、遺伝子レベルのさらなる深い解析が必要となるであろう。

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ブルーバックス
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