「怪物」かも…新型コロナと新型インフル「不気味な共通点」があった

なぜパンデミックは起きるのか
ブルーバックス編集部 プロフィール

このようにして宿主の抗原抗体反応の防御網をすり抜けたウイルスだけが生き残り、選択的に増殖を繰り返していく。

私たちが、毎年のようにインフルエンザウイルスに感染してしまうのも、感染予防のために毎年ワクチンを打ち続けなければならないのも、絶えず連続変異が生じるためなのだ。

凶暴な「新しい顔」が生まれる

とはいえ、変異が起きるといっても、連続変異はあくまでも「マイナーモデルチェンジ」なので、感染力や病原性に劇的な変化は起きない。

ところがフルモデルチェンジ型変異が起きると、ウイルスの抗原性ががらりと一変する。このような劇的な変異のことを「抗原の不連続変異」(抗原の大変異、またはアンティジェニック・シフト、図3)と呼ぶ。

不連続変異は、RNA分節が異なる複数のウイルスが同時に一つの細胞に感染した場合に起きる。

通常は、ウイルスは、親となるウイルスのゲノムを単純に複製するだけだ。しかし、一宿主が複数の亜型のウイルスに同時に感染すると、宿主の一つの細胞の中で異なる亜型のRNAの分節が混ざってしまう。ここで「遺伝子の再集合」が行われて、まったく新しい性質を持ったウイルスが誕生する(図4)。

不連続変異では、それまで流行していた季節性インフルエンザとはつながりのない、まったく新しいウイルスが生まれる。

免疫応答のターゲットとなる抗原タンパク質が一変してしまうので、以前感染したときに獲得した免疫も現行のワクチンもまったく効果がない。1975年のアジア風邪と1968年の香港風邪の原因となった新型インフルエンザウイルスは、こうした仕組みで誕生した。

flu1968年、香港風邪の影響でマスクをして接客するソ連(当時)のウェイトレス

2009年にパンデミックを引き起こした豚由来の新型インフルエンザウイルス(A型、H1N1亜型)も遺伝子再集合によって発生した、まったく「新しい顔」を持ったウイルスだ。

幸いにして、病原性は「季節性インフルエンザウイルス」とさほど変わらなかったが、実はウイルスとしてはまったくの別物である。ウイルス遺伝子の劇的ともいえる突然変異があったにもかかわらず、病原性が変わらなかったのは、不幸中の幸いとしかいいようがない。

反面、世界保健機関(WHO)がパンデミックを宣言したにもかかわらず、被害は軽微で済んだため、「パンデミックは恐れるに足りない」という油断が生じ、新型コロナウイルスの初動対応の遅れにつながったことは否定できないだろう。

異なる宿主に感染できる

新型コロナウイルスがどのようなプロセスを経て誕生したのかはいまだ不明な点が多い。

同じコロナウイルスで、SARS(重症急性呼吸器症候群)を起こすSARS-CoVは、コウモリからヒトに感染して重症肺炎を起こし、MERS(中東呼吸器症候群)を起こすMERS-CoVは、ラクダからヒトに感染して重症肺炎を起こした。