NYで親しまれている
甘さすっきりのドーナツも絶品

他にも、パン野さんが大好物というメニューがあります。
「アップルサイダードーナツ。リンゴジュースとジャムが練り込まれているそうです」

アップルサイダードーナツ ¥210
 

ニューヨークで親しまれているドーナツで、本来は白濁しただけのジュース・アップルサイダーで作られます。しかし、それではパルプ(食物繊維)感が足りないと、りんごジャムを加えたのが川本流。

「ドーナツのクラストのカリッと立った部分がサーターアンダギーの様な反面、クラムの目の詰まったやさしい柔らかさ……そのコントラストにうっとり。すっきりした甘さで美味しいです」

もともとは、約5年半前に青山の「Found MUJI」でNYダイナーをテーマにしたイベントのために作られましたが、あまりの好評さに定番化。

日本であまり知られていないメニューを作っていると、オリジナリティがプラスされていく。「まだ見ぬものを美味しく作ってみました」。その姿勢で、唯一無二のパンが作られているのです。

これらの独創的なパンは、川本さんが幼少期から海外生活を経験していたことがトリガーになっていると言います。今も毎年海外に赴き、アイデアを貯めています。

とはいえ、ジャンゴにあるパンすべてが独創的というわけではありません。パン野さんが冒頭でコメントしたクロワッサンやフランスパンといった定番は、一転してトラディショナルな作り。

「パンというフランスの文化を縁あってやらせてもらってるのですから、リスペクトをもって作っています。バゲットやカンパーニュ、クロワッサン……フランスにお手本がありますから。それを無視して作れません」

例えば、バゲットからは小麦粉の風味がしっかり感じられたり、酸味が感じられたり。クロワッサンは、製法は一般的ながら1/4サイズのシートバターを足して1枚を作り、通常より25%増。食べると芳醇なバターの香りが鼻に抜けます。

「日本のパン屋は、フランスのように歴史が伝統があるわけではないですから、なんでもできる。それが特権です」

多種多様なパンが並び、それでいて価格はリーズナブル。あくまでも”街のパン屋さん”という姿勢を崩さない「ブーランジェリー・ジャンゴ」。革新と伝統を絶妙なバランスでいく川本シェフのパン。一度食べれば、その凄さを感じられることでしょう。

ブーランジェリー・ジャンゴ
東京都中央区日本橋浜町3-19-4
☎03-5644-8722
営業時間:8:30~18:00
定休日:水、木

PROFILE

パン野ゆり Yuri Panno
パンコーディネーター、パンシェルジュ。日本全国のベーカリーを訪れ、年に数回は海外にも足を運び、パンを独自の視点で分析している。トークショーやラジオに出演する他、テキスタイルブランド「gochisou」と東日本橋の『BEAVER BREAD』とのコラボレーショングッズを発売。活躍の場を広げている。モデル・山野ゆりとして、雑誌や広告、CMなどに出演。モデルの職業を活かした、太らないパンとの付き合い方も考案している。

Illustration:YUGO. Photo:Tatsuya Hamamura Composition:Seiki Ebisu