ピアノの発表会が中止にならない!

4月5日、日曜日。都内某所で小さなピアノの発表会が開催された。会場となるのは音楽会などが行われるホール。いわゆる「密」の世界だ。

その数日前、二十年来の友人から、「ちょっと聞いてよ!」と、SNSでメッセージが届いた。友人の名前を、仮にA子とする。

冒頭のピアノ発表会は、A子の(お腹にいる時から知っている)娘が参加を予定していたものだった。A子は、発表会は「当然」中止になると考えていた。しかし、主催者からなかなか連絡が来ないため、「中止ですよね?」という確認のメールをしたところ、「この段階で中止はできかねます。ただ中止の判断は、それぞれのご家庭でご判断ください」と返信があったという。

「ねえ、どう思う?」

本当に難しい問題だ。この未曾有の出来事のなか、何が正解かは時間が経ってみないとわからない。いや、そもそも正解なんてないのかもしれない。

A子によれば、発表会はごく小規模のもので、舞台上で演奏する子どもは10人程度。とはいえ、両親はもちろん、孫の雄姿を見たいと思う高齢者も少なくないはずで、演奏者と家族だけでも40人~50人を超える「集まり」となることが想定される。彼女はそれを危惧していた。

主催者は、地域でも信頼の厚い人だ。音楽を心から愛し、なにより頑張ってきた子どもたちの晴れの舞台を実現させてあげたいという思いが一番にあることがよくわかる、とA子は言う。

子どもたちが頑張った結果を発表する場。実現させてあげたい。でも…Photo by iStock

「私も同じ思いだよ。娘も一生懸命練習していたし、地域の子どもたちの頑張りも見たい。私なんか、いつも感動して涙してしまって、家族から呆れられているもの……」

A子は情に厚く涙もろい。その姿は容易に想像がつく。彼女は続ける。

「でも今は“自分が感染している前提”で行動しなければならない時でしょ? 何よりも誰か一人が感染していたら、クラスターになりかねないよ」

涙もろいだけではなく、正義感の塊であるA子はさらに食い下がった。「私は中止にした方がいいと思います」と主催者にメールをしたところ、「スタッフ側は当然マスクをしますし、消毒用品も置きます。客席の間も空けます」という返信があったそうだ。「客席の間を開けても、窓のない音楽ホールでは換気が難しいと思います」と返したが、結論が変わらないことを悟り、最後にこんなメールを出したという。

「換気のできない密室で、数十人となる子どもと家族が介するイベントの開催はこの時期、難しいと思います。娘とも話し合いましたが、欠席させていただきます」

たとえば、自分が主催者だったら、自分が娘の家族だったら、あなたはどうするだろうか。いろいろな意見があると思う。そして、こういった「攻防」は、いまもなお、世界の至るところで行われているはずだ。