「感染症との戦い」にあたって、私たちは戦う相手である「感染症」についてきちんと知っておく必要があるでしょう。
まずは感染症の例を考えてみます。コレラ、結核、水虫、インフルエンザ、麻疹……などなど。コレラや結核は細菌、水虫は真菌、インフルエンザや麻疹はウイルスによって引き起こされます。
このように、感染症とは「細菌、真菌、ウイルスなどの病原体が体内に侵入、定着して発症する病気」のことです。
一方、私たちの体はこれらの病原体に侵入されっぱなし、というわけではありません。そもそも、私たちの体には100兆個を超える数の微生物が生きているともいわれているのに、多くの人は健康に生活できています。
それには理由があります。私たちは病原体を排除する防御システムを持っているのです。
このシステムを「免疫」または「免疫系」と言います。
免疫系の役割は、「自然免疫」→「獲得免疫」→「免疫記憶」の順で進んでいきます。
それでは、今までに感染したことのない、ある病原体が体内に侵入してしまったという設定で、順番にどのように免疫系が働くのか、具体的に見ていきましょう。
1 自然免疫
体内に侵入してきた病原体をそのまま放置するほど、人間の体は甘くありません。
病原体を攻撃する存在として、「白血球」という言葉は有名だと思います。この白血球は免疫をつかさどるので「免疫細胞」ともいわれ、単球、リンパ球、好中球、好塩基球、好酸球の5種類からなります。
白血球のうち、まず活躍するのが単球から分化したマクロファージ。この細胞が病原体の侵入を感知して危険信号を発するのです。これにより、好中球(白血球全体の過半数を占めています)などといった細胞が集まり、病原体を直接攻撃してくれます。