コロナショックで「年金」がアブない…将来世代を襲う「厳しい現実」

GPIF「過去最大損失」を考える
近藤 駿介 プロフィール

コロナウイルス感染拡大による市場の混乱によってGPIFの保有資産が17兆円以上目減りしたということは「運用収入」が失われたということである。

仮に保険料収入と税金に加えて運用収入も想定額に届かなかった場合、所定の年金給付財源を確保するためにはGPIFの積立金を取り崩して不足分を補うということになる。それは、経済と金融市場が混乱する中で株式や債券を売りに出すということである。

株式市場が大幅に下落する中で資産の売却に迫られる構図は、1990年のバブル崩壊局面で投資信託運用会社が経験した、大量解約に対応するために株価が大幅に下落するなかで株式売却を迫られ、その売りがさらなる株価下落と基準価額の下落を招き、さらなる解約を生むという地獄絵図の再現である。

GPIFは2019年末時点で5.7兆円の「短期資産」を持っているので、年金給付の財源として必要になる資金がこの範囲内であれば世界同時株安という状況の中で無理に保有株式を売却する必要はない。

しかし、それは「短期資産」で大きく値下がりした株式を購入することを放棄することであるから、株価が元の水準に戻らない限りGPIFの資産が元に戻れないということでもある。

新型コロナウイルス感染拡大によって経済と金融市場が混乱をきたしても、GPIFの積立金の取崩しをすれば、「株価の下落が年金給付に直ちに影響を及ぼすことはない」。

しかし、想定より早くGPIFの積立金を年金給付の財源として使い始めるということは、想定より早くGPIFの積立金が枯渇するということでもある。

 

つまり、足もとの株価下落による悪影響を受けるのは「現在の年金世代」ではなく「将来の年金世代」だということである。こうした状況でも「年金は長期運用だから目先の損失などで騒ぐ必要はない」といっていられるのだろうか。

新型コロナウイルスの影響が過ぎ去れば株式市場もV字回復するという期待を抱く人も多いはずである。しかし、日本の株式市場に限っては大きな期待を抱かない方が賢明そうだ。

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