「今もエキスパンダーが入った状態です」

乳がんの患者団体「KSHS キチンと手術・ホンネで再建の会」代表の溝口綾子さんのもとには、次のような相談が寄せられました。そして、このような女性からの問い合わせは複数あったといいます。

「昨年4月に某がん専門病院で、左乳房を全摘し、同時再建で皮膚と筋肉を伸ばすエキスパンダーを入れました。今もエキスパンダーが入った状態です。

形成外科医は、“うちの病院では今回、代替品として保険適用されたアラガン社のスムースタイプ※1は、被膜拘縮などの副作用があるから使用しない”とのこと。私としては、被膜拘縮が少ないテクスチャードタイプ※2で、日本人の胸に合ったアナトミカル(しずく)型※3の他社のものが保険適用されるのを待ちたいと思っています。

だから、今入れているエキスパンダーをどのくらい入れた状態でいられるのかを知りたいのです。主治医は、“工業製品だから安全とも安全でないとも言えない”と明確に回答してくれません」

※1 スムースタイプ:表面がツルツルしたもの
※2 テクスチャードタイプ:表面がザラザラしたもの
※3 現在承認されている代替品は、ラウンド(お椀)型。日本人の胸にはアナトミカル(しずく)型が合うという医師もいる

これに対し、個人の医師として日本最多、約5000例の人工乳房による乳房再建の症例数をもつ、岩平佳子先生(医療法人社団ブレストサージャリークリニック院長、日本形成外科学会認定専門医・医学博士)はこう言います。

医療法人社団ブレストサージャリークリニック院長・岩平佳子先生

「エキスパンダーは、1年以上で破損する可能性が大きいのです。そもそも、エキスパンダーは、皮膚や筋肉を伸ばして人工乳房を入れるために、6~8カ月で入れ替えるためのもの。それ以上時間が経っている人は、なるべく早く人工乳房に入れ替えたほうが良いでしょう」

乳房再建関連学会である「日本乳房オンコプラスティックサージャリー学会」は、人工乳房の再建手術を行っている全国の医療機関へ調査を実施しました(昨年8月)。 その結果、乳房再建を行うために、乳房の皮膚や筋肉を伸ばすエキスパンダ―を挿入している女性は、全国に3493人。このうち9割以上が人工乳房による再建手術を予定している人です。さらに人工乳房への入れ替えなど手術を急ぐ必要がある人は、この時点で172人いました。