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大荒れの「新型コロナ相場」、乗り切るために一番必要なもの

今こそバフェットに学べ
小出 フィッシャー 美奈 プロフィール

ところが複数の大手証券会社が集計するデータによれば、このところS&P500指数の先物(S&P500 e-mini)の流動性が過去に例がないほど低下している。最小のスプレッドで成約出来るトレードが9割も減ってしまったとか、これまでは一度の発注で1000ぐらい取引が成立したのが最近は数件〜10件しか成り立たないなどと伝えられる。市場の厚みが消失しているのだ。

また、本来は流動性が高く、現物の債券と連動するはずの債券ETFが、現物より1%以上もディスカウントされるという異常事態も発生している。

アルゴリズム取引の多い市場でなぜ流動性が急に枯渇したのかについては不明な点が多い。なぜなら、スプレッドは拡大していても、ETFや先物の取引のボリューム自体は減っているどころか急増しているからだ。

一つの説明としては、オプション(一定の価格で売買出来る権利、一種の保険のような金融派生商品)との関係が指摘される。

例えば、株式指数の「プット(反対はコール)オプション」を買うプレーヤーは、市場全体が急落(急騰)しても、予め決められた値段で指数を売る(買う)ことができる。しかしトレードの反対側にいるオプションを売る側のディーラー(クオンツファンドもこの役割を担う)は、そのままだと株価が下がるほど(上がるほど)損をしてしまうので、通常は同時に先物やETFを売って(買って)ヘッジをする。

ところが最近のように株が急激に動くと、株価だけではなくオプションの価格も大きく動いてしまうので、どんどん追加のヘッジが必要となる。株が急落(急騰)すればディーラーの自動プログラムが追加的に先物やETFを売る(買う)ことになるので、下がれば売り(上がれば買い)と一方向にばかり注文が出て需給が歪み、スプレッドが拡大してしまうのだ。

 

もう一つは、クオンツの中でもARP(オルタナティブ・リスク・プレミア)などマルチアセット型(債券や株、金融派生商品、為替など、多様な資産に分散投資する)アルゴリズム投資の影響が挙げられる。ARPは、様々な金融商品が持つファクター(金利感応度、バリュー、クオリティーなどの要因)を、お互いにリスクを打ち消し合うように組み合わせることによって、市場との連動リスクをゼロあるいは一定範囲にコントロールすることを目指す。

市場に応じて自動プログラムが投資配分まで臨機応変に変えてくれるので、その簡便さが大手機関投資家に人気が高い。預かり資産は、2000億円(22兆円)に伸びている。

しかしVIX指数が上がると、ポートフォリオのリスクを下げるために、株などのリスク資産の配分を落とす方向に一斉にプログラムが動く。これは世界中のクオンツファンドが一度に大量の売り注文を出すことにつながり、その売りによって更にリスクが高まり、それが新たな売りを呼ぶことが、市場のボラティリティーを一気に高めると考えられる。

いずれにしても、今回の事態で一つはっきりしたのは、アルゴリズムが主流となった今の市場では、流動性が最も必要になる市場の危機に、以前よりも極端なスピードでそれが消えてしまうという事実だ。