イングランドサッカー協会が、ユース年代の練習でヘディングを制限するガイドラインを発表し、大きなニュースとなった。サッカー選手の脳の病を発症する確率が、一般の人に比べて高くなるという。その危険性を認識し、育成の方法を見直したり、ルールを設ける必要があるという意見はまっとうだ。

一方、日本では指導者によって認識がまちまちなのが実情だ。実際に脳出血を発症した9歳のサッカー少年は、現在も治療中だ。

サッカー少年が苦しむ頭痛

2月上旬の週末。父と子でスキーに行った帰りの新幹線駅構内で、突然息子は頭を抱えたままうずくまった。

「痛い! 頭が痛いよ」

 聞いたことがないような大きな声で泣きじゃくる息子を前に、男性は混乱した。
「どうして? 今日はサッカーの日じゃないぞ。なぜ痛いんだ?」
40代で会社員の男性は、このことがあった4ヵ月ほど前から、小学3年生の息子に度々頭痛が起きることを知っていた。

サッカーの練習や試合の前になると、きまって「頭が痛い」と体調不良を訴えてくる。しばらく様子を見ていたが、ある日話を聞くと息子は特定の子たちにいじめられているようだった。

サッカーが大好きだから始めたのだが、そこには怒鳴られる指導といじめが待っていた…Photo by iStock

「おまえ、Bチームに落ちるよ」「おまえなんか(試合は)ベンチに決まってる」
度重なる悪口、容姿の特徴など揶揄する「いじり」、練習中の嫌がらせなどがあると言うのだ。

しかも、そのクラブはコーチにも問題があった。子どもたちを委縮させるような指導の仕方が目立った。
「何度言ったらわかるんだよ!」
「そんなんじゃ試合に出られねえぞ」
「おまえなんか、もう使わねえ」
試合の最中でもベンチに呼びつけて説教したり、ミスした子どもに罰走を命じた。

「これが少年サッカーの世界なんですね。指導者は子どもを怒鳴りつけ、ひたすら指示を出している。主役は誰だっけ? と疑問を抱きました」

そう話す男性は、子どもがサッカーを始めてから3年間の中で、怒鳴らず子どもの主体性を引き出すような指導をしているのは「神奈川から試合に来ていた1チームしか見たことがない」と言う。

いじめてくるチームメート、怒鳴ってばかりの怖いコーチ。
「そんな悪しき環境だったので、これはもう心の問題だろうと僕たち親も思い込んでしまった」(男性)

心療内科に連れて行くと、やはり病名は「適応障害によるストレス反応」。
「症状の悪化を防ぐため、クラブの環境を改善することが望ましい」と書かれた診断書ももらってきた。それをクラブの代表に提出すると、こう一喝された。
「なんですか、この診断書は。うちの練習方針も知らない人間になぜクラブ環境の改善の指示ができるんですか? これはダメですよ!」

話し合いにならず、結局、男性は息子とも話し合い、ほかのチームに移ることにした。