なぜ韓国・文在寅政権は「コロナ抑え込み」に健闘できているのか

日本も参考にできるところがある
牧野 愛博 プロフィール

文在寅政権の事情もある

韓国で新たな感染者が発生した場合、携帯電話に一報が入る。その時点で使っている基地局によって、近くで発生した感染者の情報を提供する。職業や居住地などだ。そこにはURLも入っており、クリックすれば、その感染者の行動経路まで詳しくわかるという。

韓国は感染者が使っていた携帯電話とクレジットカード、そして韓国人がCCTVと呼ぶ街中の防犯カメラを使って、徹底的に感染経路を洗い出す。韓国はお菓子一つ買うにもカードを使う社会だし、北朝鮮からのスパイ防止という理由もあって至るところに防犯カメラが設置されている。この3つを使えば、私生活はほぼ丸裸にされる。

また、集団感染が起きると、その場所の近くの基地局を利用していた携帯電話利用者に、韓国疾病管理本部が次々に電話を入れて、症状の有無を問い合わせる。

もちろん、これに対して「風評被害」や「人権侵害」を訴える声が全くないわけではない。しかし、大多数の市民がそれに従っている。韓国政府関係者の1人は「韓国は北韓(北朝鮮)と準戦時態勢にある。ほとんどの男性は軍隊経験があるし、有事には慣れている」と語る。

 

また、文在寅政権にはそうした徹底的な施策をとらなければ、「政権がもたない」(ソウルの外交筋)という理由もあった。

韓国では2015年にMERSが流行したが、その際、大規模病院での院内感染が起きた。韓国では政府の対策不徹底を非難する声が上がった。

その前年には旅客船セウォル号沈没事故が起き、やはり当時の朴槿恵(パク・クネ)政権の危機管理不足を非難する声が世間から巻き起こった。文在寅政権の関係者は、まさにこの非難側の急先鋒にあったため、政権発足後も危機管理では細心の注意を払ってきた。