なぜ韓国・文在寅政権は「コロナ抑え込み」に健闘できているのか

日本も参考にできるところがある
牧野 愛博 プロフィール

韓国はなぜ抑え込めているのか

政府が緊急事態宣言を出した場合、各自治体の判断で移動や外出の自粛を要請できるが、罰則はない。他の法律を使えば、強制力もある程度行使できるが、欧米諸国のように「許可のない外出をすれば罰金」というような事態は想像しにくい。

この議員によれば、緊急事態宣言を出す意味は、むしろ末端の地方自治体も含めて、緊急事態に即した医療・行政体制に移る契機にすることだという。「宣言が出れば、医療ベッドの増床などの動きが鈍い自治体にも緊張感が出てくる」(同)というわけだ。

この議員は「日本人は有事に慣れていないから、平時からの頭の切り替えがどうしても鈍くなる。政府関係者はどうしても楽観論にすがりたくなり、メディアは必要以上に危機をあおってしまう」と指摘する。

 

ただ、だからと言って、欧米諸国が国民を信頼しているから強硬な措置に出ているかと言えば、そうではない。むしろ強制力を伴わなければ国民が従わないと思っているからこそ、罰則を設けたり、政治指導者が強い言葉を発信したりして、国民を動かそうとしている。

欧州の安全保障に詳しい大学教授は「欧州の大抵の国は過去20年、何らかの形で戦争に関わってきた。だから、ある程度、有事への対応力が育っている」と語る。

冷戦崩壊後、米国と欧州各国はボスニアやアフガニスタン、イラクなどでの紛争にたびたび介入してきた。政治指導者が「戦争」という言葉を使っても、ある程度受け止められる力がある。この大学教授は「欧米諸国はまず、最悪の数字を公表して、国民に頭の体操をさせる。そのうえで罰則を使ってコントロールする」とも説明する。

また、別の中国を専門分野とする大学教授は「日本は長く平和だった。それに加えて、2003年の重症急性呼吸器症候群(SARS)や15年の中東呼吸器症候群(MERS)の流行で、厳しい洗礼を受けなかった。幸いなことだったが、逆に感染症に対応する力を育てる機会を逃してしまった」とも語る。

一方、日本と同じように強制力を伴った措置を最小限にしながら、ある程度感染者数を抑えている国もある。お隣の韓国だ。

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