新型コロナ、現場医師が迫られる「命の選別」〜あまりに重い決断

「誰を助けて、誰を見捨てるのか」
週刊現代 プロフィール

命を選別せざるを得なくなったとき、日本の医師は大きな決断を迫られる。「誰を助け、誰を見捨てるか」という明確な判断基準がないからだ。

「イタリアでは『60歳以上は、人工呼吸器をつけない』というシンプルな基準を設けた地域もありました。非情にも思えますが、無いものは無いため、どうしようもないのです」(前出・森兼氏)

 

目の前の患者を救うという、医者として当たり前のことができない。その苦悩のなかで医者たちに残された選択肢は少ない。致死率の高い持病持ちの60代・70代は後回しに。そう自分を納得させるしかないだろう。

中国疾病対策予防センターのデータによると、感染者全体の致死率は2・3%だが、不整脈など心臓や血管に疾患がある人は10・5%と約5倍も致死率が高くなっているのだ。糖尿病、喘息、高血圧などの持病がある場合も、致死率は高まる。

持病がある60代以上の人は、人工呼吸器を使っても助かる見込みが低い。ならば助かる可能性が高い若者を優先することを、誰も咎められない。

頭ではそうわかっていても、それで現場医師の苦しみが小さくなるわけではない。

「もともと医師は患者を治すという使命感に燃えて仕事をしています。医療崩壊さえ起きなければ助けられた命でも、治療をしないことを自分で選択しないとならない。このプレッシャーとストレスは体験した者しかわかりません」(前出・坂本氏)

さらに「訴訟リスク」も懸念されている。

「なぜ自分の家族は見捨てられなければならないのか」「なぜあの人は治療を受けられてこの人は受けられないのか」。患者側は当然、こうしたやりきれない思いを抱く。

「重症患者が爆発的に増えれば、現場医師は最悪1~2分で誰を助けるかを判断しなければなりません」(帝京大学大学院公衆衛生学研究科教授・高橋謙造氏)