恐怖の日々、医療現場で働く医師たちにはいま、巨大な負担がのしかかっている。なかでも医師たちに大きな精神的負荷をかけているのが「命の選別」だ。発売中の『週刊現代』がその実情を特集する。
スペインの首都、マドリードにあるインファンタ・レオノール病院は、大混乱に陥っている。
「マスクもガウンも薬も、何もかも底をつき、人工呼吸器も酸素タンクも足りない。そもそもマドリードでは遺体置き場も足りないため、アイススケート場を遺体安置所にしています。
何より辛いのは、医療設備さえあれば救える命を、見捨てなければならないことです」
本誌記者にこう語るアナ・ヒメネ医師は、普段は小児科医をしている。しかし今は非常事態だ。ヒメネ氏は、新型コロナの対応に忙殺されている。
病院では患者を寝かせるベッドも足りず、あぶれた患者は椅子に座らされている。今やその椅子さえ足りなくなってきており、通路にも10人以上の患者が横たわっている。
「人工呼吸器の数も限られるため、重症の患者が運ばれてくると、誰を助けるか決断しないといけません。スペイン政府のガイドラインでは、回復する可能性が高い若者を優先的に治療することになっています。
もし持病がある人や、高齢者が運ばれてきても、治療もできず、見殺しにするしかないのが現実です」(ヒメネ氏)
スペインでは4月1日時点で新型コロナの感染者数が10万人を超え、死者数も9000人を超えた。24時間以内の死者数も864人で過去最多を更新している。
新型コロナの感染爆発が起き、医療体制が崩壊したスペインやイタリアでは今、現場医師たちが過酷な状況に立たされている。医師にとってもっとも辛い「命の選別」を迫られているのだ。