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コロナ禍のドイツで突如「アディダス叩き」が沸騰した理由

発端は新設された「正義の法律」だった

「アディダス製品は二度と買わない」

コロナ禍が続いている。現在、実施されている人的交流の制限、および店舗の閉鎖などが早急に解除される見込みはない。ドイツの連邦政府と州政府は、あれこれ臨時の法律やら、政令やら、条例やらの制定・公布で大忙しだ。

先週も書いたが、ドイツでは、収入がなくなり、家賃やテナント料が払えなくなってしまった人を、家賃滞納を理由に追い出すことが、9月まで禁止された。

https://gendai.ismedia.jp/articles/-/71416

大家が、それで生活苦に陥ってしまった場合は、一時的な金銭援助を申請できるらしいが、貯えがあるならひたすら我慢。早くコロナ禍が去り、店子が滞納分の家賃を払ってくれることを祈るしかない。

この法律はSPD(社民党)の主導で作られ、SPDの法相は、貧しい間借人や、零細企業主などを救う正義の法律と鼻高々だったが、これを、「家賃滞納OK」のサインと受け取った人は多かった。それも、アディダス、H&Mなどといった大企業が、幾つかの店舗で4月分のテナント料を滞納するつもりだということが発覚した。

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実は、真実は若干違い、アディダスが滞納の対象にしたテナント主は個人ではなく、大型不動産会社や銀行などだったというが、そんなことに耳を貸す人はもちろんいない。世間は怒りで沸き立った。

そうでなくても、人々は現在、不自由な生活のなか、「連帯」を強いられ、経済的不安の中で暮らしている。ソーシャルメディアはあっという間に「アディダス製品は二度と買わない」の大合唱(#adidasboykott)。アディダスは世界で5万人の雇用を持つ大企業なので、叩きがいはあるだろう。

しかも、ここで目に付いたのは政治家のツイート。それも、この法律の生みの親であるSPDの政治家が、やおら「道徳」を振り回して、アディダス攻撃に熱中していた。煽っているのか、それとも、ポピュリズムか?

たとえば、バイエルン州のフロリアン・ポスト議員は、「二度とアディダス製品は買わない!各種クラブも、コロナのあと、誰をスポンサーとするかを考えるべきだ」とツイートし、バケツの中にアディダスのポロシャツを入れ、燃やしているビデオを添付した。どこかの国の、国旗を燃やす憎悪シーンに似ていないか?

さらに、やはりSPDの大御所で、現在、EUの欧州議会の副議長を務めるカタリーナ・バーレイ氏はというと、ツイートの写真は、アディダスの靴を履いた4本の足で、「これは私たちが買った最後のアディダス。2019年に32億の利潤をあげた世界的コンツェルンが、困窮した間借人を保護するための規制を利用するとは卑劣だ」とのメッセージ。

ちなみに、こういう、自分たちが良い人間であるという自信に満ち溢れ、道徳的に上位に立ち、他人を弾劾する人が、私は苦手だ。というより、たいていの場合、こういう人たちのことは、あまり信用していない。

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