ロックダウンのフランスで「レジ係が英雄」に…でも、それでいいの?

ウイルスで浮き彫りになった「階層」
大野 舞 プロフィール

浮き彫りになる階層

哲学者のマリ=ジョゼ・モンザン(Marie-José Mondzain)はウイルスが我々みんなを襲ったことは間違いないが、それはすべての人々を平等に襲ったわけではないと言う。

「確かにウイルスは我々を脅かしているが、我々を平等に脅かしているわけではない。生活条件の不平等がウイルスの毒性の度合いと、生き延びる上での脆弱性を左右している。(…)それは民主主義が疫病よりもずっと前にすでに対処すべきであった、不安定な職についている人々、ホームレス、病人、障害者たちの脆弱性をより明確化し、より耐え難いものにしているのだ」

封鎖された社会では、これまでも存在していたのに見えづらくなっていた不平等、あるいは人々が見ることをどこかで拒否していたような不平等が、一気に可視化されてきた。

3月21日のパリのスーパー〔PHOTO〕Gettyimages

そして、隠されてきた社会の構造、そして階層というものがはっきりと見えるようになってきたとも言えるかもしれない。

前出の社会学者・メダ氏もインタビューの中で、このような状況下で、特権的で高収入を得ていた人々はあっという間に存在感を失い、今までは誰の目にも止まっていなかった職に就いている人々が、生活を支える人々として注目され、そして誰にとっても役に立っていることが明らかになったという。

ロックダウンの中で、清掃の人が来なくなれば一気に道や住居も不衛生な場所になるだろうし、そもそもスーパーの機能が止まってしまえば生きていくことすら危うくなる。

 

ではこの非常事態が一旦緩和した時に、社会のシステムが変化するのだろうか。この問いに対してメダ氏は、特権的な職業につく人々は高収入なだけではなく権力も持っているため、システム全体が突然ポスト・コロナ時期に変化するのは難しいだろうとしつつ、もはや呆れるほど不条理な収入の差に関しては議論すべきだろうとする。これまで社会で顧みられなかった人々の職業が社会的に最も役立つとなれば、それなりに見合った収入があるべきなのだ、と。