ロックダウンのフランスで「レジ係が英雄」に…でも、それでいいの?

ウイルスで浮き彫りになった「階層」
大野 舞 プロフィール

しかし、実際に彼ら/彼女らはこうしてヒーローのように言われることを求めているのだろうか、とフランスのメディア、Mediapartにブログを書いているテオ・ポルテ氏(Théo Portais)氏は問うている。大統領が自ら、彼ら/彼女らをヒーローと仕立てるのはあまりにも安易ではないか、と。

なぜなら、これまでフランスの公共医療システムは予算が削られ、労働条件の悪化も著しかったからだ。かなり前からこの医療システムが崩壊する危険性について、医療従事者たちが中心となって政権に訴え続けてきた。

これまでの政策の問題点のしわ寄せをもろに受けている人々を掌を返すかのようにヒーローとして崇め、「自分を犠牲にしてまで働く人々」というイメージを付与してしまうことは、問題の本質を見えなくさせてしまうというわけだ。

コロナウイルスの対応に追われるフランスの病院〔PHOTO〕
 

同じことはもちろん、スーパーなどのレジ係についても言える。社会学者のドミニック・メダ氏は、インタビューの中で、特に女性が多いセクター(レジ係の9割は女性、ケア業界も女性がマジョリティ)で彼女たちが低い報酬で仕事をさせられていることを指摘している。と同時に、その理由の一つに、彼女らに求められる能力は「自然」のものであるという認識が広まってしまっていることがあるという。

癒すこと、笑顔を向けること、親切に対応することは女性の生得の能力だから、それほどの給与を支払わずともその力を発揮してもらえるというわけだ。

彼女(彼)らをヒーロー化してしまうことで、労働条件の悪さや報酬の低さ、そして社会的な認知度の低さに関する問題に蓋をしてしまう可能性があるというのは、個人的にも一理あると思う。