ロックダウンのフランスで「レジ係が英雄」に…でも、それでいいの?

ウイルスで浮き彫りになった「階層」
大野 舞 プロフィール

その流れはSNSでも見られる。スーパーに来る客に感謝され、それに感動をして涙を流すレジ係の姿に、芸能人が「本当に感謝」というコメントとともにツイートし、それがバズるなど、脚光をあびている。

しかし当事者たちは当惑しているようだ。あるレジ係の店員は、これまでは客が自分の子供に向かって「ちゃんとお勉強しなきゃ、この人のようになっちゃうからね」と囁くのを聞いたりしていたような状況だったのが、一気にヒーローのように言われ、毎日感謝される状況に戸惑っているという報道もあった。そして彼は同時に、崇められたとしても、いつ感染するかもわからない中で仕事に向かうことは、本当はとてもつらいことでもある、と訴えているという。

先日、50代のレジ係のアイーシャさんが新型コロナで亡くなったというニュースも反響が大きかった。

フランスではレジ係をしていた女性(Anna Samさん)が2007年にブログを開設し、一躍有名になった。彼女がそのブログの中で訴えていたのが、この仕事に携わる人々はもはや周囲の人にとっては存在すらしていない、という点だったのだが、今回の封鎖により、一気に彼ら/彼女らの存在は可視化され、普段どれだけそうした人々の恩恵を受けていたかが明らかになった。

 

ヒーロー化への疑問の声

現場仕事に携わる人たちへの称賛や感謝が目立ち始め、注目が集まるようになった一方で、彼らを褒め称え、自己犠牲でもしているかのように「ヒーロー化」することに関しては、疑問視する意見もある。

フランスでは、夜8時になると人々が窓を開けて医療関係者に感謝の意を表して拍手をするというのが恒例化している。たしかに、いつもとは比にならない仕事量とリスクを背負わされている人々に私たちができることはこれくらいしかない。夜8時にたくさんの拍手の音が聞こえてくるのは感動的ですらあると私も感じる。