ロックダウンのフランスで「レジ係が英雄」に…でも、それでいいの?

ウイルスで浮き彫りになった「階層」
大野 舞 プロフィール

そういえば、同じ建物に住む長距離トラックのおじさんは普段から忙しそうだが、さらに忙しくなったのか、まったく姿を見かけなくなった。毎週同じ曜日の朝に聞こえてくるのは、ゴミ収集車の音だ。車の通る音も、道ゆく人々の笑い声も消えた生活の中で、以前と変わらず、同じように聞こえてくる数少ない音の一つだ。また、私たちの暮らすアパルトマンにはこれまでと変わらずに、清掃の人が来てくれている。

スーパーでレジ打ちをしている知り合いに聞くと、幼い息子がいるけれども、相変わらず仕事に行かなければならないという。私が言葉を交わしたレジのお兄さんも、「こんな状況だから、普段以上に働いているんだ」と言う。家庭の事情などから欠勤率も高くなっている中、レジ打ちを続ける人々は毎日、不特定多数の人たちとの接触を余儀なくされている。

 

進む「ヒーロー化」

そんなレジ係の彼ら/彼女らは、ジワジワとフランス社会でヒーローのように言われ始めた。

マクロン大統領の演説が象徴的だった。第一線で戦っている医療関係者を称えると同時に、レジ係の人たちも異常事態のフランスのために「第二戦」で働く人々であるとして、大統領自ら感謝の意を表したのである。

「私は(この状況下で)第二線で働く方々に感謝の意を表したいと思います。(…)それは、農業従事者、食品業界に携わるすべての方、生活必需品を取り扱う店で働く方、配達人、レジ係です。彼ら・彼女らは、戦っているフランスが生きていくために働いているのです。時には彼ら・彼女らも自分たち、そして家族のために不安を抱いているということもよく承知しています。ですから、今夜はこうして心から感謝をお伝えします。また、国家は皆様を全面的にサポートいたします」

〔PHOTO〕Gettyimages

これまでは人々の目に止まりにくかった仕事をする人々が、こうして大統領に感謝されるようになったのである。