松平定知アナが「名城にまつわる55の物語」を書いたワケ
有働由美子アナにも「殿」と呼ばれて十代目坂東三津五郎さんと語り合った城談義
NHKの人気番組『その時歴史が動いた』など多くの番組、著書で歴史を紐解いてきた松平定知さん。言わずと知れた日本を代表するアナウンサーだが、実は徳川家康の異父弟である松平定勝が祖となる松平伊予松山藩久松松平家分家旗本の末裔でもある。世が世ならお殿様だった松平さんが、『一城一話 55の物語 戦国の名将、敗将、女たちに学ぶ』を上梓した。城のガイドブックとはひと味違う本書の魅力を本人が語ってくれた。
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編集 空前の城ブームと言われますが、松平さんが城の本を書こうと思ったきっかけはどのあたりにあるのでしょうか?
松平(敬称略) アナウンサーという仕事柄、いろいろな方と会う機会がありますが、ある時偶然にも旅先の旅館で十代目坂東三津五郎さんに遭ったんです。三津五郎さんとは、番組ではとうとうご一緒できなかったのですが、八十助時代から、その「城好き」はつとに有名だったし、歴史やお城関連の講演会などで、ご一緒する機会も何度かありました。そんなこともあって、それぞれの用件が終わったところでロビーに集合した私たちは、城の話をあきれるほどしたのです。

編集 テレビでも三津五郎さんのお城巡りの番組がありました。
松平 お城というと縄張りや櫓、曲輪(くるわ)、石垣、天守、破風(はふ)の形や瓦、漆喰(しっくい)などなど、それこそ話は尽きなかったのですが、二人が意気投合したのは、城は構造上の物や形の面白さはもちろんだけれども、行きつくところは、やはり「ヒト」ですよね、ということだったのです。そんなことを以前、何かにちょっと書いたことがあります。それをたまたまお読み下さったのが、講談社ビーシーの方で、「うちのベストカーに、『城と人』というテーマで連載を!」という話になったのです。