今さら訊けない「ニューラルネットワークって何ですか?」に答えます

連載3回「AIブームの次にくるもの」
松田 雄馬 プロフィール

膨大なデータを集めることで環境の変化をすべて予測するという「力技」によって支えられているのが、現在の人工知能の正体である。

もちろん、計算機の性能が向上したからといって、必ずしも簡単にデータが集められるわけではない。

海の中や森の奥地など、そもそも人間が足を踏み入れることが困難な場所は当然のこと、家庭内に子供や動物がいれば、彼らは常に予測不可能な突拍子もない動きをする。そうした環境においては、データというものは意味をなさず、環境の変化に対して、システム自らが対処することが求められる。

環境の変化に対処する仕組みは、生物の反射の仕組みに見ることができる。

 

「ぶつかったら避ける」「腹が減ったら食べる」などといった原始的な生物も持つ仕組みは、どのような環境であったとしても、環境の変化に対して、システム自らが対処することを可能にする。

こうした反射の仕組みを応用することで、近年、ロボット掃除機のルンバに代表される、単純ではあるが環境の変化に対して自ら対処できるロボットが開発された。彼らは、「ぶつかったら避ける」など、自らの身体と環境との相互作用を通して、環境の変化に対して適応的に振る舞う。

システムは環境に適応しつつある Photo by Getty Images

こうしたシステムの設計思想は、生物が環境に適応していく仕組みに極めて近い考え方であり、生物が本来持つ「知能」との関連性が強いといえる。

とはいえ、生物の仕組みに関しては、まだまだわかっていることのほうが少ない。それゆえ、いまだ設計思想としては発展途上の段階である。

現在の人工知能ブームを支えるシステムの設計思想は、こうした発展途上の生物が本来持つ「知能」とは異なり、大量のデータを学習することによって「環境の変化をすべて予測する」という思想を源流とする。

データを学習することを前提とする以上、適切に動作するかどうかは確率的にならざるを得ず、100パーセント正確に動作するということはありえない。

そもそも、現代の情報システムは、すべて論理演算を行うコンピュータによって成り立っており、完全に人間の手を離れることはできない。論理演算を行う以上、どれだけデータを学習しても、その判断は確率的にならざるを得ず、人間のように、見たり聞いたり感じたりすることはできない。

「想定外」が起こらないことが100パーセント保証されていない限りは、人間の手を離れることはあり得ないのだ。

したがって、想定外に対して、見たり聞いたり感じたりといった感覚を総動員することができる人間が、システムに関与しなければならない。つまり、人間の感覚を最大限に発揮できるようなシステムを設計する必要がある。

そうなると、「人工知能」がどんどん普及していくこれからの社会に求められる能力も、おのずから明らかになってくる。それは、システムに関わるすべての人間、すなわち、システムを設計する設計者、実際に手を動かして開発する開発者だけでなく、日々メンテナンスを行う技術者や、システムを利用する利用者など、すべての人間の立場に立つ能力であろう。

この「すべての他者の立場に立つことができる」という能力は、設計者であっても、開発者であっても、また、利用者であっても、立場を超えて役に立つものと考えられる。

Photo by Matthew Henry from Burst

「きっと、相手はこのような立場だから、このように振る舞っているのだろう」ということが見えてくるようになれば、自分自身がどのように振る舞っていくべきかが見えてくる。

その先にこそ、現代社会に、そして、近未来の社会にとって必要なシステム像が見えてくるのではないだろうか。

【「AIブームの次にくるもの」バックナンバーはこちら】