今さら訊けない「ニューラルネットワークって何ですか?」に答えます

連載3回「AIブームの次にくるもの」
松田 雄馬 プロフィール

また、ニューラルネットワークが多層化されたことにより、2 も機械が自動的に抽出できるようになった。

こうして、「猫の特徴を持つ細胞(ニューロン)が自動的に作られた」 という事例が報告されるようになり、ニューラルネットワークの研究は加速した。

ニューラルネットワークはアートのモチーフにもなっている Photo by Getty Images

特に、画像認識の性能向上は目を見張るものがあり、画像や映像のなかの人や物体を高精度で認識し、表情や動作に至るまで、高い精度で認識できるようになった。そのため、深層学習が発明されてから十数年間が経過する現在まで、多くの分野へ応用され、省力化を実現している。

医療の分野では、内視鏡画像から大腸癌を自動検出。農業の分野では、前もって学習した画像から、きゅうりなどの野菜を自動的に仕分ける。小売りの分野でも、パンの形状から価格を自動判定して、レジを自動化する。ほかにもさまざまな分野で、これまで人間の手をわずらわせていた多くの作業が自動化された。

応用が進んでいるのは画像認識だけではない。深層学習はいま、人間の声から誰が何を話しているのかを認識する音声認識や、記事などの言語で書かれたものから内容を推定する自然言語処理、そして、画面の中で登場人物を動かすゲームやエンターテインメントなど、数多くの分野で活躍を見せているのだ。

「人工知能」の「学習」は人間のそれと同じなのか?

ここまでの流れをおさらいすることで、「ニューラルネットワーク」による「学習」が、人間のそれとどう関連するのかということを、見直してみたい。

 

1 神経細胞(ニューロン)の生理学的な研究から、神経細胞は、ON/OFFを繰り返す「電球」のような性質を持つということがわかった。

2 神経細胞(ニューロン)の性質から着想を得て、「学習」する「人工ニューラルネットワーク」が「発明」された。この「ニューラルネットワーク」は、心理学的な知見から着想を得ているが、あくまで人工的に作られたもので、脳の行っている「学習」のしくみと同じかどうかはわからない。

3 「ニューラルネットワーク」は、コンピュータの進化により、高精度な「学習」ができるまでに進化した。ここでの「学習」は、基本的には、人間が与えたデータをもとに「分類」できることを指している。コンピュータが人間の手を離れて予期せぬ成長を遂げたり暴走を始めたり、ということとは関連性がない。

現在、話題が集まっている「ニューラルネットワーク」は、3 に記した、人間が与えたデータをもとに「分類」を行うものがほとんどである。

このため、現在は、「ニューラルネットワーク」の「分類」のしくみを囲碁や将棋に応用して勝率を上げるなど、「ニューラルネットワーク」の「分類」のしくみを応用する研究に、特にビジネス面での注目が集まっている。

しかしながら、「分類」を行う「ニューラルネットワーク」は、上に述べたように、数千数万という膨大なデータがないとリンゴやミカンを「学習」できない。一度口にしただけでその形や色や味や触覚に至るまで、すべてを「記憶」して思い出すことができる人間の「学習」のしくみとは、根本的に異なるようにも思える。

人工的に再現できても別物だ Photo by Getty Images

実際に、「身体による経験がないと学習は進まない」という実験結果がいくつも報告されているなど、人間の「学習」のしくみには、まだまだ未知の部分が多く残されている。まだ「何もわかっていない」と言っても言い過ぎではない。

これからの時代に必要な「人工知能」への考え方

近年、計算機の急激な性能の向上によって、より多くのデータを高速で処理できるようになった。

その結果、「ディープラーニング」と呼ばれる、膨大なデータを機械的に「学習」していく技術が作られた。この技術は、「画像の中から物体を認識する」などといった作業を、これまでにないくらいの高い精度で実現した。