紙とペンで宇宙を見る「理論物理学者」はいつも何を考えているのか

「宇宙の根源」を解く新理論が見えた!
新版・窮理図解 プロフィール

超新星爆発とは質量の大きい星の最期に起きる大爆発のことで、星の中でつくられた元素は宇宙空間に放たれる。この元素が身のまわりの物質や生命を構成しており、超新星爆発はすべての源であるといえる。

2006年に発見された超新星「SN 2006gy」の爆発の様子 Illustration by NASA

ところが、従来の理論では爆発が起こりにくい。この問題を「カイラル輸送理論」を応用すると解決できるかもしれない。

カイラル輸送理論とは山本さんが2012年に論文発表した理論で、素粒子のもつ「カイラリティ」という性質によって生じる輸送現象を理論的に記述したものだ。

身近な輸送現象として電場をかけると電流が流れるというオームの法則があるが、この場合は電流に伴って熱が発生し、エネルギーを損失する。しかし、素粒子のカイラリティの性質を使うと、通常の物質では起きないようなエネルギー損失のない輸送が可能になる。

従来の超新星の理論では、ニュートリノという素粒子が、まわりの物質に十分なエネルギーを与えることなく外に逃げてしまい、爆発に至らないという問題があった。

しかしそこでは、「ニュートリノには左巻きのカイラリティしか存在せず、それによって左右の対称性が破れている」という性質が見落とされていた。

カイラル輸送理論がこの性質によって生じるエネルギー損失のない輸送現象をも記述することから、超新星爆発の謎に迫る新たな方向性の研究に発展しつつある。

超新星爆発とニュートリノの関係性

わからないことだらけの「この世界」

精力的に研究を進める山本さんだが、「解きたいことはたくさんあって、“ネタ帳” にはまだ手付かずの問題が50以上あります」と話す。

 

その中には、超新星爆発の研究のように全貌の解明に何年もかかり、膨大な計算が必要なものもある。一方で、アイデアさえ得られれば1週間程度で論文を書けてしまうものもあるという。

どんな問題であっても、解ければ新しい世界が見えてくる。山本さんが見せてくれる世界が、ますます楽しみだ。