紙とペンで宇宙を見る「理論物理学者」はいつも何を考えているのか

「宇宙の根源」を解く新理論が見えた!
新版・窮理図解 プロフィール

将来もっと小さな構成要素が発見される可能性はあるが、現時点ではクォークとニュートリノ、電子やその仲間が物質の最小の単位だとされ、素粒子と呼ばれている。核子の内部にクォークが存在することは、大型加速器などを使って行われる実験で確かめられている。

日常生活では物体が「ニュートン力学」の法則に従って運動するように、極小世界のクォークは「量子色力学」という法則に従って運動する。“色”といっても実際に色が付いているわけではなく、クォークが3種類の自由度をもつことを光の三原色になぞらえている。

「量子色力学では、核子からクォークを1つだけ取り出すことはできません。不思議ですよね」と山本さん。これが「クォークの閉じ込め」の問題である。

「クォーク同士が“強い力” によって結び付けられているから」と説明されているが、誰も量子色力学に基づいて解析的に証明はできていない。

「物質とは何か」を知りたい

「『クォークの閉じ込め』の問題が解決できなければ、クォークが集まってできている物質を本当に理解していることにはなりません。この問題に限らず、そもそも“物質”についてはわからないことだらけなのです」

 

山本さんの理論研究は「クォークの閉じ込め」のテーマを追いながら、同時に「物質とは何か」を明らかにすることに向かっている。では、どうやってこの目標に迫っていくのか。

「理論物理学では、よく極限状態を想定します。たとえば、今では核子から取り出せないクォークも、ビッグバン直後の超高温の初期宇宙ではバラバラのプラズマ状態『クォーク・グルーオン・プラズマ』として存在していました。

逆に、物質を圧縮して超高密度状態にするとどうか。最終的にはクォークの超伝導や超流動の状態になると考えられていますが、そこに至るまでにどのような状態をたどるかを考えます」

こうして、「物質とは何か」を明らかにしていく。

2008年より稼働した欧州原子核研究機構(CERN)の大型ハドロン衝突型加速器(LHC)。パノラマ画像で撮影 Photo by Getty Images

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最近、山本さんは超新星爆発の研究に力を入れている。