新型コロナの影響もあり、「家に籠ってできる楽しみ」が重要になっている。料理はその一つではないだろうか。

ベストセラーエッセイ『お金がなくても平気なフランス人、お金があっても不安な日本人』(講談社文庫)の著者の吉村葉子さんは、かつてパティスリー&カフェを経営していたほどの料理好き。多くのエッセイでも料理のことを多く綴っている。外食も楽しく美味しいけれど、自宅で安上がりに食を楽しむことを大切にするのが「ケチ」なフランス人の真骨頂。その季節にあったものを市場で買い求め、シンプルにいただくことが何よりの贅沢なのだ。つまりお金も手間もかけない料理、である。

春は、様々な野菜が美味しいシーズンを迎える。中でもフランス人が愛するホワイトアスパラガスは、最近日本でも手に入る機会が増えてきた。エッセイ集の中から、吉村さん自身のちょっとほろ苦くも美味しいホワイトアスパラガスの思い出をお伝えする。

お金をかけずに美味しいものを食べる

生活全般を食に凝縮してみても、「お金をかけずに美味しいものを食べる」ことに今の私は、もっとも興味を持っている。ところが正直いうと、倹約とか節約という言葉で想起するガマンというのが性にあわない。

お金は最終的に自分でやりくりしなくてはならないのだから、お金にたいする考え方も自分できめる。人が何といおうと、負け惜しみだろうと、お金がないなどと愚痴はいわない。お財布の中身は、自分が一番よく知っているのだから。

「ありそうでないのがお金、なさそうであるのもお金」の格言を信じて、これからもお金があるふりをしていくつもりである。そのかわり食材は、安くて美味しいものをさがす。ところがさがさなくても、世の中には安くて美味しいものがたくさんある。

鯛はお刺身より、かぶと煮が食べたい。魚の塩焼きはかますより、いわしが食べたい。和食についてはべつの機会に述べるとして、フランスの地方料理は安くて美味しいものの宝庫である。

高くて美味しいは当たり前。安くて美味しいを目指して、新鮮な食材を安く手に入れるのも楽しい Photo by iStock

牛ヒレ肉のステーキより、スネ肉の煮込みが美味しい。フォアグラより、豚肉のパテがすきだ。今やフランスのグラン・シェフたちも、こぞって地方料理に注目する時代である。飽食の時代といわれる現代に、今さらフォアグラやトリュフ、キャビアをありがたがるのは流行おくれだ。それよりも野菜料理が嬉しいし、豚肉が美味しい。