2020.04.02
# 日本史

「犯人は誰だ!?」室町時代の裁判記録を東大教授と解読する

<日本史のツボ>のツボ 第5回
本郷 和人 プロフィール

史料を深く読み込んでみよう

次に史料を深く読み込む、とはどういうことか。史料(A)の大意をつかむのは以上の如くであるが、子細に見ていくと、まだまだいろいろな疑問はあるのだ。それにきっちり答えられるように、読解に努めねばならない。この史料に関して格別の注意力が必要になってくるのは、具体的には湯起請の問題であるだろう。

神明裁判という言葉を聞いたことがあるだろうか。神の意志を得ることにより、物事の真偽、正邪を判断する裁きの方法である。 古代、中世、地域によると近世まで、細かな性質は各々の神や宗教によって異なるものの、世界各地によく似た行為があったようだ。

湯起請は神明裁判の1つで、古代では盟神探湯(読みは「くがたち」。探湯・誓湯とも書く)といった。ある人の是非・正邪を判断するための呪術的な裁判法(神判)である。対象となる者に、神や仏に潔白を誓わせた後、熱湯の中に手を入れさせる。すると神仏の加護が働き、正しい者は火傷せず、いつわりある者は大火傷を負うとされる。

 

東大・史料編纂所の入所試験

この境相論では湯起請が行われたことが明らかである。ではそれはいったい、どのように行われたのか。何を目的に行われたのか。それを正確に読み取らねばならない。これはなかなかに難しい作業となる。大学院の入試では、受験する人に厳しいかもしれない。ぼくが勤務している史料編纂所は、入所希望者に1次選考として試験を課す。それにちょうど良い。ちなみに2次選考は面接と論文審査となる。それで新規の所員が決定する。   

問題はこうである。先の大学院入試の問2と問3はボーナス問題として出すことができる。これが問アと問イ。問ウとしては、もっとも主要な問エを解く助けになるように、「史料中の『如此題目』を具体的に示せ」という問題を置く。その上で問エを記述させる。「この採決には湯起請が用いられているが、それはどのような手順で行われたか。またその結果はどうなって、それを受けて判決はどうなったか。だれが、という要素を確実にいれて、具体的に記せ」。

なお、先に記した「湯起請は神明裁判の1つで・・・いつわりある者は大火傷を負うとされる」の文章を注記しておくのも良いだろう。その方が「知っている、知らない」の要素を確実に排除できるから。

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