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大相撲無観客場所に透ける「相撲協会ファースト」という変わらぬ体質

なぜ「物言い」がつかないのか

新型コロナウイルスの感染拡大を受け、大相撲3月場所は無観客での開催となった。横綱二人の相星決戦で白鵬・鶴竜健在であることを見せつけ、一方で関脇朝乃山が11勝4敗で大関昇進を決めた。横綱の牙城は崩れないが大関以下では世代交代が進んでいるという、ここ最近の大相撲を象徴する場所だったが、最近の大相撲を象徴する特徴がもう一つあった――。

「結果オーライ」でいいのか

プロ野球もJリーグも開催を中止され大規模イベントに対する自粛要請が出る中、相撲協会は3月1日に大相撲3月場所を無観客で開催することを決定した。

「一人でも感染者が出たら中止」という制約を設け、相撲協会は感染防止のために力士と関係者には体温測定を義務付けた。入り待ちや出待ちするファンが殺到するリスクも想定して、公共交通機関ではなくタクシーか自家用車で裏口から力士を来場させるといった対策も取られた。会場での待機時間が長くなるため弁当を作って持ち込んでいる力士も多く、その中身がSNSで話題になった。

15日間で危機が無かったわけではない。下位の力士が37.5度を超える発熱が続いたために検査を受けたこともあった。好調の幕内力士、千代丸も高熱が続き、一旦休場して検査を受けたところ陰性であることが判明したため、その後再出場するという一幕もあった。こうして力士と関係者による努力の甲斐あって、大相撲3月場所は感染者を出すことなく完走出来たわけである。

感染者は出なかった。関係者の努力には本当に頭が下がる想いだ。日本全国で誰もが抑圧された生活を送る中で、2週間楽しみを与えてくれたことには感謝しかない。だが、果たしてそれだけで終わらせて良いのだろうか。非常事態の中、場所を完遂したことを称賛しているだけで良いのだろうか。

ひとつ疑問なのが、本場所を中止ではなく無観客で開催するに至った「理由」である。

 

開催を決定した3月1日時点で関西地方の感染者は既に存在していた。他のイベントが開催を自粛する中で、無観客とはいえ開催に踏み切るのはリスクが伴う決断であった。オーバーシュートが発生し、状況が急激に変化することも想定できる状況だったし、事実、決定から3週間後、千秋楽の時点では大阪と兵庫では感染者数がいずれも100人近くまで増加していた。

この決定について相撲協会は専門家を交えて協議した、ということまでしか分からない。ただ無観客での開催を決行するのであれば、リスクにどう向き合い、それでも開催可能であると判断した「理由」が存在するはずだ。こんなに重要なことを、相撲協会は説明していない。