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コロナ不況が追い風? 「欧州分裂クライシス」の深刻な事態

欧州を40年間見続けてわかったこと

冷戦後の「EU・我が世の春」の終わり

右派ポピュリズムの躍進は、EUが直面する戦後最大の政治的危機だ。その理由は、民主主義の原理が再び悪用されて、人権重視や差別の禁止など欧州が守ってきた「価値」が脅かされているからだ。

私がポピュリズム革命の深刻さを強く感じる理由は、約40年前から、欧州の劇的な変化を見つめてきたからだ。1980年の夏に研修生として西ドイツの金融機関で初めて3ヵ月にわたって働き、壁で分断されたベルリンを見た。

1989年にはNHKの記者として、壁が崩壊した直後のベルリンで取材した。そこでは市民が涙を流しながら、町を東西に分割していた壁をハンマーで壊していた。私はその様子を見て「欧州は大きく変わる。その変化を現地から定点観測したい」と思った。その後私は1990年9月にドイツに居を移し、約30年間この国で取材、執筆活動を続けてきた。

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私が1990年以降ここで目撃したのは、欧州の歴史上稀な「黄金期」だった。鉄のカーテンが取り払われ、ソ連を頂点とする「帝国」は熱い鉄板の上に置かれた雪のように、みるみる内に溶けていった。

東西統一、ソ連軍の旧東ドイツからの撤退、ソ連崩壊、中東欧諸国のEU・北大西洋条約機構(NATO)への加盟、ユーロ導入、人口約5億人の大経済圏の誕生、一部の欧州諸国(シェンゲン協定に加盟した国)での国境検査の廃止など、冷戦時代には考えられなかった変化が生じた。「欧州は一歩ずつ連邦に向かって近づいていく」と感じた。