真夜中の漂流、そして夜明けに見えたのは…大航海のクライマックス!

丸木舟スギメの大冒険 最終回!
3万年前の人間は、なぜ海を越え、日本列島に渡ったのか──。その謎を解き明かすべく始まったのが「3万年前の航海徹底再現プロジェクト」。

当時使っていたであろう丸木舟を石器で製作し、当時と同じ条件で、台湾から日本列島を目指す。

そのプロジェクトのクライマックスである航海の模様を、完全追跡する集中連載、最終回の今回は、ついに与那国島へ到着! プロジェクト完遂の瞬間を見届けてください。(前回はこちら

【登場人物紹介(敬称略)】

原 康司:経験豊富で常に心穏やかな頼れるキャプテン
宗 元開:レジェンドと呼ばれる伝説のカヤッカー
鈴木 克章:草・竹・木の全ての舟を漕いだ唯一の漕ぎ手
村松 稔:与那国の魂を背負って漕ぎきった役場職員
田中 道子:抜群のパドルセンスで丸木舟を操った舵とり

2度目の夜の英断

20時25分。動き出したスギメが向かう先の空には、あろうことか、最初の夜よりも厚い雲が立ち込めていた。星は1つしか見えず、頼みの月も、どこにいるのかわからない。それでも夜の闇は容赦なく海上を覆い始め、たいへん厳しい状況となってきた。

しばらくすると、一瞬だけ木星が顔をのぞかせ、ぼんやりと月も見えたが、どちらもすぐに雲の背後に姿を消した。昨晩は雲の隙間に部分的な星空があったが、今はそれすら望めない。

「いったい誰のどういう仕打ちなのだろう……」

自然を責めても何も得られないことはわかっているつもりだが、さすがにやるせない気持ちになってしまう。

「5人はどうするのだろう。この状況でもまた奇跡を見せてくれるのだろうか……」

と、私は口に出さずにあれこれ考えた。

今のこの状態で方角の目印になるのは、うねりくらいである。ただしそのうねりは時間を追って変化するので、闇雲に頼ってはいけない。難しい状況だが、なんとか食らいついて手掛かりを探し、舟を進められるだろうか。私が伴走船上で思いをめぐらせていたとき、原さんから無線連絡がきた。

「えー、今から、漕ぎ手は全員休憩に入ります」

一瞬耳を疑ったが、ふと考えて、それは素晴らしい判断だと思った。今は皆、疲労しきっているのだ。しかも空を見ても方角はよくわからない。そこで何かを無理に仕掛けるのではなく、思い切って休もうというのは、英断だ。一度しっかり休んで、周囲の状況が改善するのを待てばいい。

 

しかし、じつはここにも、現場で我々には告げられなかった漕ぎチームの判断材料があったのである。

そのしばらく前、原さんは、北北東方面に灯りらしきものを見たというのだ。それは「見えたような、見えてないような」あいまいなものだったが、白色の光は灯台のように思えた。

そこで原さんは半ば確信を持ち、光の方向へ漕ぎ進んで確かめようと皆に提案したところ、宗さんと鈴木さんという丸木舟に推進力を与えていた2人が、「もう限界で漕げない」と言う。そもそも鈴木さんには、そのような光が本当にあるのかどうか「わからなかった」そうだ。

村松さんも、「皆が幻覚のようなことを言い出すので、よっぽど疲れているのだと思いましたよ。自分もそもそもお腹の調子が悪く、もう動けないところまで来ていたので、率先して僕は休むと言いました」と述懐する。