全員はマトモな医療を受けられない…英国はコロナ危機を乗り切れるか

国立病院の疲弊とリソース不足
谷本 真由美 プロフィール

検査まで1ヵ月待たされた

GP経由で予約できる専門医は、国立病院で働いています。

国立病院は年間の予算が決まっていますから、なるべく患者の数を減らしたいと考えています。日本のように私立の病院がたくさんあって、患者が一部費用を負担する仕組みではありませんから、治療すれば治療するほど病院が儲かるというわけではないのです。

日本に比べると検査機器の数も少ないですから、例えば簡単なCTスキャンだと、緊急性が低いとされた場合は2〜3ヵ月待ちになります。人によっては半年先です。運が悪いと、検査を受ける前に症状が悪化して死んでしまうことがあります。

 

例えば、私の子供は2歳の頃、鼻から目にかけてできた巨大な嚢胞にバイ菌が入ってしまい、目の周りが大きく腫れてしまうという症状に見舞われました。GPではなぜ腫れているのかがわからず、検査しましょうと言われ、国立病院でCTスキャンを取るのに1ヵ月も待ちました。

それも小児眼科の専門医の先生が、ありとあらゆるコネを使ってしつこく交渉し、時には事務方を怒鳴りつけ、やっと入れてくれた予約です。この先生が頑張ってくれなかったら、無理でした。単なる検査にそこまでしなければなりません。

それでも、予約が2回もキャンセルされてしまいました。国立病院には空いている機械が一切ないとのことで、ロンドンにある超高額な私立病院のCTスキャンの使用料を、国立病院が負担するということで検査が受けられることになりました。

その間、子供の顔の腫れはまったくひかず、医師からの指示といえば「タオルをお湯にひたして、毎日膿を絞り出しなさい」というものだけでした。 泣き叫ぶ2歳の子供を押さえつけて膿を絞り出す苦行……まるで衛生兵になった気分でした。