全員はマトモな医療を受けられない…英国はコロナ危機を乗り切れるか

国立病院の疲弊とリソース不足
谷本 真由美 プロフィール

「国民皆保険」はあっても…

例えば、私の友人がイタリアに来た際に具合が悪くなり、公立病院の救急治療室に入ったことがあったのですが、救急の患者なのに、なんと待ち時間は4時間以上でした。 決して清潔とはいえない古い病院の廊下で倒れそうになっている友人を、必死で介抱したのをよく覚えています。

国民皆保険といっても、イタリアはこのところの緊縮財政で医療レベルがどんどん低下しているのです。イタリアでの新型肺炎の死亡率の高さも、それが原因の一つです。

 

イギリスの国民医療サービス(NHS)も、イタリアの制度と同じく国民皆保険です。収入がある人は稼ぐ金額に応じて国民保険(National Insurance) を支払います。

この国民保険には国民年金も含まれています。イギリスには厚生年金がないので、自営業もサラリーマンも同じ国民保険を払います。その代わり、治療費や入院費、入院時の食費、入院時のガウン、医療に必要な器具などは無料ですし、投薬もどんな薬でも一回1000円ほどの処方箋代を支払うだけです。収入が少なければ、この処方箋代も払う必要がありません。

ところが 「無料は無料なり」です。その質の低さは、日本人には信じがたいレベルです。

Photo by gettyimages

まず、そもそも医療を受けるためには家庭医(GP、General Practitioner)に登録しなければならないのですが、地域によってはGPが 常に満杯で、登録を受け付けてもらうことさえできないところがかなりあります。登録は居住区によるので、評判が良いからと別の地区に行くことはできません。選択肢が限られているのです。空きがなければ、引っ越してきても何週間も何ヵ月も待たされます。その間は治療が受けられないのです。