成人後の環境も進化している

18歳になり、特別支援学校などの学校を卒業したら、どうなるのだろうか。

「私が15年前に障害者就労に関わり始めた時、障害者雇用促進法が定める障害者の雇用率は1.8%でしたが、今では2.2パーセントで今後3%まで上がると言われています。そこで、以前は障害が重すぎると考えられた人にもチャンスが出てきて、ダウン症の方も企業の障害者枠に就職する人が出てきています」

講演会で障害者の企業就労について話す松原さん 撮影/河合蘭

ダウン症の人は障害が重いグループに入りやすので雇用した企業側に優遇措置があったり、体力的にきつければ短い就労時間でよいとされたため、就労が進んだそうだ。

企業と雇用契約が結ばれると自治体が定める最低賃金以上の金額が支払われるので、15~16万円の月給を受け取ることができます

とはいえ、誰もが企業に就職できるわけではない。
「割合から言えば、ダウン症の人で一番多いのは、『就労継続B型施設』に通うケースです。これは障害者と施設の間に雇用契約はなく、障害者側が利用料を支払って通い、パンを作ったり、袋に物を詰める作業をしたりしながら平均額で17,000円ほどの『工賃』をもらう福祉的就労です」

松原さんの感触では、企業に就職できるダウン症の人はまだ、首都圏でも1割には満たない。ただ、ひと昔前は障害者に選択肢はなかった。今は、本人の希望や障害の程度により選べる時代になった。どちらが良いかは一概には言えない。企業に就職すれば効率を求められ、福祉サービスで働くほうが本人のストレスがないという面もある。

「経営者の腕によっては、就労継続施設でも、プロフェッショナルと連携して商品開発をした美味しいクッキーやパンを製造し、高い売り上げを誇って月6~7万円の工賃を払っているところもあります。そこで働いている人と工賃1万円の事業所で働いている人の障害の重さは同じなんですよ。

本当は、就労継続施設も『障害のある方が作ったから買ってください』という発想ではなく、優れた商品を開発して利益を上げていくべきだと私は思います。今、生まれている子たちが大人になるころには、福祉の就労施設にもいい所が増えていくという期待はしています」

こうした就労による収入のほかに、二十歳を過ぎると、ダウン症のような知的障害を持つ人は「障害基礎年金」を受け取ることができる。
「障害基礎年金2級の場合は月々約65,000円が受け取れ、これは企業でお給料をもらっていても、年間の所得額が約360万円以下であれば満額を受け取ることができます」