ジャーナリストの河合蘭さんによる連載「出生前診断と母たち」。これは日本の出生前診断の「今」をお伝えしてくものだ。前回の記事では、障害者雇用の職に就いていた松原未知さんが、不妊治療を経て、ダウン症のお子さんを出産したその根拠や背景をお伝えした。

障害をかかえたお子さんの出産に関する心配は「将来」というものだ。しかし松原さんは自身が知識を持っているからこそ、「大丈夫」だと感じたという。それはどういうことなのか、具体的に障害者の雇用形態や生活設計について教えてもらった。

松原未知さん前回記事はこちら

障害者支援を15年

障害者を採用する企業の人事、障害がある人の就労・定着支援など障害に関わる多彩なキャリアを15年間も積み、その間に、奇遇にも自身がダウン症の男の子を授かった松原未知さん。

親心もわかるし、福祉の実情、企業の本音も、みんなわかっている。
障害児を育てる親たちにとってこんな頼もしい存在はいないと思われる松原さんは、全国の親の会、教師たちから依頼を受けて講演活動も行っている。その日も、松原さんはダウン症の子どもを持つ親の会「キャロットクラブ」の母親、父親たちを、マルチな彼女ならではの歯に衣を着せないトークで沸かせていた。

「企業の障害者雇用担当者は、ある日突然にそうなる。福祉の常識がわかりません。私がそうでした。大きなスポーツバックにじゃらじゃらマスコットをつけて面接に来る高校生たち、スーツに革靴じゃなくて白い運動靴はいて面接に同行してくる支援学校の先生、もうびっくりしちゃった(笑)」

今日、ダウン症の子ども時代については育児ブログも増えたが、出生前診断をめぐる判断に迫られ、ダウン症について検索している人にとって、一番知りたいのはその先の事ではないだろうか。

ダウン症の赤ちゃんが生まれたら、どんな大人になるのだろうか?

仕事はできるのだろうか?

経済的に破綻するのではないか?

ところが、こうした福祉や障害者就労の話は、出生前診断について相談できるプロフェッショナルとされている遺伝カウンセラー、臨床遺伝専門医たちの専門外なのである。

松原さんの長男・佑哉君 写真提供/松原未知