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人手不足の海上保安庁「29歳まで受験可能」に…背景にある中国の横暴

北朝鮮漁船の違法操業も急増している

尖閣諸島の領海から中国公船を追い出し、日本海では北朝鮮の違法操業漁船の取り締まりに汗を流し、洋上の麻薬取り引きに目を光らせる――。宮沢賢治の「雨ニモマケズ」を地で行くような海の治安機関「海上保安庁」。

その海上保安庁で働く海上保安官に、大学卒業者がほとんどいないことをご存じだろうか。

海上保安官として欠かせない専門科目や技能の習得に4年以上を要するためで、幹部を養成する海上保安大学校には、高校を卒業して入校するコースしかなかった。しかし、冒頭で挙げたような業務の急増に伴い、今年から大学卒業者にも門戸を開き、2年間で幹部を速成することになった。

採用予定は約30人。少子化が進む中、官民問わず各業界は優秀な若者の取り合い状態。海上保安庁では「何人の応募があるだろうか」と息を凝らして見つめている。

 

ブームは去ったが、業務は急増

海上保安庁は、かつて漫画やテレビドラマで話題になった『海猿』の舞台である。同作は海上保安官の中でも特殊な技能をもつ「潜水士」を描いた物語だったが、おかげで一時、海上保安官を目指す若者が海上保安庁に殺到した。

そのブームが去る一方で、近年業務は急増。これまでの採用のあり方では必要な人員の確保が難しくなり、採用制度を見直した。

海上保安庁公式サイトより

海上保安庁の職員は約1万4000人。このうち地上勤務が約8000人、現場は船舶・航空機で約6000人いる。国土交通省から出向中のキャリア組官僚38人を除けば、大半は海上保安官で、地上勤務と現場は定期的に交代する。

海上保安官になるには、幹部コースの海上保安大学校(在籍約60人)へ進むか、一般課程の海上保安学校(同約600人)へ入学するかの二通りの方法がある。

このうち保安大学校は高卒者しか受験資格がなかった。大卒者を除外していたのは、専門科目や技能の習得に4年9カ月を要するためで、高卒者なら修了時に22歳だが、大卒者は26歳を越えてしまい、組織内で出遅れてしまうからだ。