新型コロナ大流行、内戦下を生き抜いたシリア難民から学ぶこと

仕事とコミュニティについて
小松 由佳 プロフィール

新しいコミュニティの登場

そもそも、シリア人は、日常的に誰かと何かを分かち合うことを大切にしてきた。他者を思いやることで、巡り巡って自分も大切にされるからだ。

彼らにとっての労働も、必ずしも賃金を介さない人間関係の構築に大きな意味があった。自分がどんなコミュニティに属し、どんな仲間を持つかを知る場だったとも言える。

内戦下は、それまでの日常で培ったこうしたネットワークを駆使し、生活に窮する者への食料の支援や、他の土地からの避難者への衣食住の提供もごく普通に行われた。

特筆すべきは、こうした動きの全てが、市民による、あくまで自発的で無償のものだったことだ。空爆や軍事衝突の絶えない悲惨な状況下でも、人々は民間のコミュニティの力で自分たちを守ろうとしてきた。

こうした気概は難民となっても健在だ。370万人という、最も多くのシリア難民が暮らすトルコでは、難民としての自らを守るためのコミュニティのあり方が日々模索されている。

例えば、普及しているのがスマートフォンを使ったコミュニティだ。代表的なものがインターネットアプリ「ワッツアップ」で各街ごとに作られたシリア人コミュニティで、人々は必要なもの、与えられるもの、その他多くの情報を日々交換している。

その内容は実に多種多様で、都市部までの乗合いタクシーの同乗者を募る、というものから、自転車をあげます、貸家や医者を探している、野菜や肉を分けてもらえないか、結婚相手を探している、家具を売りたいなどだ。

なかでも生活支援と仕事についての情報、さらにメディアからの情報ではない、市民発信の治安の情報を得ることが最も人々に必要とされている。つまりこのコミュニティは役所でもあり、メディアであり、各種相談所、ハローワーク、リサイクル店でもある。

 

かく言う私も取材時、英語の通訳や、体調不良に陥った息子のための病院をここで探してもらった。困ったときはいつでも気さくに情報と助けを求められる場だ。

シリア難民にとってはこうしたSNSコミュニティの存在が必要不可欠なこともあり、彼らはほぼ例外なくスマートフォンを持っている。コミュニティは、難民として生きるための財産であり、最後のライフラインなのだ。

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